新城彰の本棚

ミステリー好きの自分勝手なコメント

小さな政府を標榜するシンクタンク

 半月ほど前紹介した渡瀬裕哉氏の「すべての増税に反対すること」を政治家に求める話は、それなりに面白かった。再びBook-offで著者の本を見つけたのが本書。2019年末に発表されたもので、2020年の米国大統領選挙を予想しながら米国の政治(選挙)状況や外交戦略、日米関係を論じたものだ。

 

 著者はトランプ政権には見かけの破天荒さとは違って、規制緩和と減税をし、海外からは撤兵し、着実な成果を挙げているという。ただ民主党も選挙に本来強く、2016年に共和党が勝てたのはあまりにもヒラリー候補に人気が無かったかららしい。だから2020年の大統領選挙ではブティジェッジかバイデンかは分からないが、民主党候補にトランプは苦戦するだろうとも述べている。

 

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 大統領・上院・下院全てが民主党になる「トリプル・ブルー」になった時の日米関係を筆者は心配しているが、結果はみなさんご承知の通り。選挙予想はさておき、共和党内の派閥についての記述が興味を惹いた。民主党も今中道派と左派をバイデンがどうまとめるか苦しんでいるが、共和党にも、

 

◇主流派 中道的で、民主党とも妥協可能。ブッシュ親子やマケイン候補など。

◇保守派 建国理念に忠実、民主党政策には全て反対。多分WASPで、レーガンなど。

 

 があって、トランプ政権は久々の保守派主導だとある。主流派から保守派が巻き返せたのは、保守派の中の均衡していた対立が崩れある程度統一されたためらしい。建国理念に忠実な伝統的保守派とオーストリア学派の流れを汲むリバタリアン派の対立が、第三の派閥ナショナリストが登場して伝統的保守派と組んだためとある。

 

 筆者はこの共和党の変革を陰にいただろう、ヘリテージ財団や全米税制改革協議会へのンタビューから、規制改革・減税・海外からの撤兵などを進言した事情を聴いている。その内容は納得できるものだが、その中でヘリテージのアンソニー・キムが、筆者の設立した「パシフィック・リム総研」を評して「減税・規制緩和・小さな政府といった保守主義の精神を体現している日本で唯一のシンクタンク」と言っているのが興味を惹いた。

 

 米国に比べて、日本ではシンクタンクの社会的認知度は高くない。戦後は特に霞ヶ関シンクタンクとして機能していた。しかし令和の現状では、日本にも政府に直言できるシンクタンクは必要だと思います。この組織はその候補の一つですね。