先日「兵法がわかれば中国がわかる」で、この困った隣国の行動様式を勉強した。習大人がかなり威勢のいいことを言っているし、新年早々中国海警局の艦船が尖閣沖に出没している。日中間で何かが起きるとしたら、この海域である公算は高い方だろう。2019年発表の本書は、米国在住の軍事評論家北村淳氏が、日本政府や日本人に向けての警告として著わしたものである。著者の主張をまとめると、
・日本の国家安全保障会議(JNSC)は、中国軍が尖閣に上陸したら一旦これを許し、米軍と自衛隊の戦力を結集して奪還する戦略である。
・しかし米軍は動かない可能性も高く、自衛隊の戦力だけでは奪還は不可能。
・海空自衛隊の戦力を中国軍の2/3まで(10年かけて)拡充し、絶対に上陸させないことを目標にすべき。
というものである。本書に記された尖閣海戦シミュレーションは以下のような経緯をたどる。
・中国軍は小規模の戦力で尖閣に上陸、漁業用の灯台を建設する。これは侵攻ではなく自国の島に設備を築いただけ。
・国際世論が戦争と認めないので米軍は動けず、海空自衛隊だけの奪還艦隊は中国本土からの地対艦ミサイルの飽和攻撃で壊滅する。
・自衛隊のミサイルも中国艦隊に迫るが、全艦隊を集結させた中国軍の防空能力はこれらを阻止する。
という次第で、日本政府は降伏に至るというのが骨子。
以下、島嶼防衛のあり方が述べられているが、これは僕も知っている常識、
・海洋国家の防衛線は、大陸の港のその背後にある。(英国がベネルクス三国にナポレオンやヒトラーが侵攻すると怒る理由)
・上陸戦は最初に一日が肝心、上陸させれば脅威となる。(D-Day前のロンメル元帥の言葉)
を種々の例を引いて説明しただけ。自衛隊と人民解放軍の戦力比較などは、米国での情報に接するコンサルタントとして該博な知識と思わせる。しかし、では日本政府はどうすべきか(最終章:真の独立国へ)の部分は拍子抜けである。
筆者は戦後日本が、平和ボケと米軍依存の無限ループに陥って、防衛力の整備を怠っていると指摘する。一方で先制攻撃能力・爆撃能力をもてず、軍事費の増額も難しい中でどうしろという提案はない。
筆者の真意の分かりにくい本でした。筆者の主張ポイントは、
・巡航ミサイルの大量配備
・陸上自衛隊の人員は過剰
だとWebにあります。それは分からなくはないですが、もう少し建設的な提案が欲しかったです。