新城彰の本棚

ミステリー好きの自分勝手なコメント

超マクロ経済学による説明

 本書の著者水野和夫氏は、三菱UFJモルガンスタンレー証券のチーフエコノミストだった人。その後内閣官房審議官などされ、現在は日大教授。僕はマクロ経済学では、一番分かりやすい解説をしてくれる人だと思っている。本書も何気なく買ってきたのだが、読んでみるとマクロ経済学の視点から、

 

・日本内の格差問題、お金配れ/配らない論争、株価高騰

・欧州の混乱、Brexit、米国も含めたポピュリズム台頭

・中国の戦狼外交化、インドの自由貿易圏嫌い

 

 などが全部説明できてびっくりした。筆者の議論は「金利ゼロ」から始まる。1600年ころから始まる資本主義は、高すぎ(10%以上)る金利の制限から始まり、欧州各国がフロンティアを求めて地球を開拓、フロンティアから資源をある意味搾取して自国経済を発展させた。その傾向は20世紀半ば過ぎまで続き、先進国の労働者が豊かになり「分厚い中間層」となって民主主義・自由主義を発展させた。資本は金利と言う形で先進国の人達にあまねくリターンをもたらした。

 

 その意味で、フロンティアがある限りは資本主義のやり方で、先進国では民主主義・自由主義がすすむ。ところが20世紀終盤に地政学的フロンティアの限界が見えてきた。もともと資本主義には「過剰」を産む傾向があり、限界が見えてバブルに走った日本資本主義はバブル崩壊後、低迷する。

 

        f:id:nicky-akira:20210219141521j:plain

 

 米国の方は「電子化された金融」という新たなフロンティアを開拓していたので少し遅れるが、これも2008年のリーマンショックで破綻する。そして今中国のバブルが大きくなって破綻危機にあると、2014年時点で本書は言う。いずれにしても、金利は非常に小さくなっていく。

 

 金利は資本主義の鼓動のようなもの、これがゼロになってしまえばリターンを産まない資本主義に意味はない。かつての先進国は財政出動で乗り切ろうとするが、格差が拡大し株式や不動産の高騰を招くだけ。困窮している人の手元にはカネが届かない。「COVID-19」騒ぎで、筆者の予測は想定より早くやってきている。資本主義をあきらめきれないとすると、新しいフロンティアが必要だ。

 

・宇宙に求める。

・サイバー空間に求める。

・戦争で新しく作る。

 

 くらいしか考えられない。これまで世界中の主だった国の経済動向を勉強してきましたが、本書によればいずれの課題もルーツは一緒です。さて資本主義の終焉の後、僕らはどうすればいいのでしょうか?