新城彰の本棚

ミステリー好きの自分勝手なコメント

分かりやすく、子供にも分かるよう

 先日、歴史探偵半藤先生と本書の筆者池上彰氏の対談風の本を紹介した。僕は筆者がNHKの人だったということしか知らず、TV番組で種々のニュース解説をされているのは知っていたが、まともに視聴したことは無い。だが上記の本を読んで、一度著作を読んでみたいと思っていた。そんなおりBook-offで見つけたのが本書(2018年発表)。

 

 ちょうど安倍総理が国会に、自衛隊の存在を憲法9条に明記する憲法改正案を提出して2020年までに改正憲法を施行する意志を示したころの執筆である。一言半句憲法を変えてはならない原理主義者もいるし、占領憲法改正を叫ぶ人もいる。そんな中、9条への自衛隊明記は国論を分ける争点だ。ただ自衛隊って何なのかを十分理解せず、「改正!」「反対!」を叫んでいる人も少なくないやに聞く。本書は国論を分けるならそのまえにしかるべき理解をしましょうという目的で書かれたもののようだ。

 

 タイトルは「自衛隊の本当の実力」となっているが、それらしいのは最終章の「ミサイル攻撃のX-Day」で北朝鮮のミサイルが発射されてから10分間のシミュレーションくらい。あとは自衛隊の誕生経緯から、現有戦力、憲法上の扱い、国内外の主な任務、歴代内閣は自衛隊をどう見ていたかなどが整理されている。

 

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 読み通して感じるのは、とにかく分かりやすく書かれているなということ。失礼ながら僕なら100文字くらいでしゃべってしまうことを、イラストや図表も入れて4~5ページかけて解説してある。噛んでふくめるというのは、まさにこういうことなのかと感心した。もちろんスタンスもニュートラル。右左は言うに及ばず、何かの考えにこだわることは全くなく、事実を伝えるということに専念しておられる。

 

 それはいいのだが、やはりタイトルは少し問題だと思う。「実力」を語るなら、北朝鮮のミサイル対処という1点だけのシミュレーションでは不十分だ。隣国だけでもロシアあり、中国あり、昨今は同盟国だったはずの韓国まで空母を建造しようとしている。対北朝鮮に空母など不要だから、かの国の仮想敵は日本、主戦場は日本海(東海)とみての計画だろう。さらにサイバー空間や宇宙に関する記述は全くない。

 

 著者の意図とは別に、出版社がこのように「売れそうな」タイトルを付けたのかもしれません。それに引っかかって買ってしまった人がここにも居ますからね。