新城彰の本棚

ミステリー好きの自分勝手なコメント

ファーストクラスの娼館チェーン

 先日「スクールデイズ」を紹介したロバート・B・パーカーの「スペンサーもの」の、次の巻が本書(2006年発表)。前作で「スペンサー一家」に仲間入りしたような黒人ギャングメージャーや弁護士リタは登場せず、スーザンとホークが帰ってくる。そしてもう一人、シリーズ三度目の登場になるエイプリル・カイルがスペンサーを訪ねてきて物語が始まる。

 

 第9作「儀式」での彼女は16歳の家出娘、悪質な売春組織に取り込まれていたいたところをカウンセラーのスーザンとスペンサーに救われる。

 

https://nicky-akira.hateblo.jp/entry/2019/07/19/000000

 

 家にも帰れず特に芸もない彼女を、スペンサーはニューヨークの娼館の経営者パトリシアに預けるという非倫理的だが現実的な解決をした。第13作「海馬を馴らす」で、ポン引きに食い物にされていた彼女を再びスペンサーは救っている。それから17年、37歳となったエイプリルはパトリシアから「のれん分け」をしてもらい、ボストンで娼館の経営をしていた。

 

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 そんな彼女の娼館に、地元のギャングであるオリイ一家が圧力をかけ始める。営業妨害が続き、用心棒役の元警官にも辞められて困ったエイプリルはスペンサーに助けを求めた。20年前からエイプリルを嫌いなスーザンはいい顔をしないが、スペンサーはホークと娼館に赴きやってきたチンピラを蹴散らす。

 

 パトリシアに手ほどきを受けた、エイプリルの娼館経営は高級路線。客室乗務員や大学院生、主婦などちゃんとした女性をそろえ、客の方も厳選して「安心して優雅に遊べる」ファーストクラスのもてなしを可能にした。

 

 エイプリルはもっと高級なチェーンを「ドリームガール」計画と呼んで作り上げようとしていた。ただパトリシアは消極的、協力してくれるファンズワースは元詐欺師だ。娼館の警護をホークに任せたスペンサーは、ニューヨークで事件の背景を探り始める。するとオリイとファンズワースが.22口径の銃で殺害される。両都市のギャングの影がちらつく中、エイプリルを守って事件を解決しようとするスペンサーだが・・・。

 

 長いシリーズ(本書が34作目)で、何度か登場する人物はおおむねスペンサー一家に入ってくる(本書のゲイのガンマンテッドのように)が、エイプリルがそうなれるかどうかがポイント。ファーストクラスの娼館という商売の是非はともかく。