本書は、元NHKワシントン支局長でジャーナリストの手嶋龍一氏と外務省で「ラスプーチン」のあだ名で呼ばれた主任分析官だった佐藤優氏が、当時の世界情勢を語ったもの。「中央公論」2019年8~11月号の記事向けに行われた対談がベースになっている。
題名は「日韓激突」となっているが、内容は韓国・中国・イランなど中東・米国と日本の情勢を網羅している。日韓間の軍事情報包括保護協定(GSOMIA)破棄、安倍首相のイラン訪問・ハーメネイ師との会見、トランプ・金正恩会談、米国大使館のエルサレム移転、ホルムズ海峡での日本タンカー攻撃、習大人の「新長征」宣言・・・など、たった1年半前の事なのに、忘れてしまった国際的な事件たちのことを思い出させてくれた。
両者の視点は「Intelligence」、手嶋氏はこれを「国家が生きぬくための選りすぐりの情報」と定義する。再三「Five Eyes」のことも出てくるが、米国が世界のリーダーを辞めようとしていた時代に、日本は生き抜くために英国や英連邦との関係は重要で、参考とするのはイスラエルだとのこと。脈絡はないのだが、いくつかためになる情報があったので記してみると、
・韓国は半島国家だったが38度線封鎖によって、海洋国家になった。
⇒ なるほど、それで竹島を支配し、空母を作って日本に対抗するのか。
・安倍総理は、父親(外相)の秘書時代からイランにパイプがある。
⇒ これをトランプ先生との仲介に役立てようとの訪問だった。
・英国高官は訪中時、スマホ等は持って行かない。データを全部抜かれる恐れ。
⇒ 確かに、このくらいのことはできる「社会インフラ」は整備済み。
・プーチンの政策は成功し中間層が増えたが、彼らは「反プーチン」になった。
⇒ 貧困層はやむなく「強いリーダー」に盲従するが、中間層は違う。
・韓国への強硬姿勢など、安倍官邸の外交は本来外務官僚が望まないやり口。
⇒ 外務省は官邸を陰で「現代の帝国陸軍」と呼んでいる。中核は経産省。
・習大人は共産党を愛してはいない。政治権力を得る道具と捉えている。
⇒ あからさまにこの種の発言があり、ひょっとすると党内に不満が?
・(タンカー攻撃などの)犯行の証拠を握っても、それを示すデメリットもある。
⇒ 情報収集力があることを知られてしまう。アトリビューションの難点。
いろいろ考えさせてくれ、ヒントを貰えましたよ。