新城彰の本棚

ミステリー好きの自分勝手なコメント

活字で読む「信長の野望」

 今でも新バージョンが出ているかどうかは知らないが、「信長の野望」はKOEIが販売していたビデオゲームの名作である。ゲームの区分としては、日本の戦国時代を舞台にした戦略級。武将キャラに兵力を持たせ、野戦や攻城戦を戦わせる。力攻めだけではなく、敵武将の調略・買収などの手段も可能だ。一方、領地の治世をちゃんとやらないと、隣国に侵攻する原資も得られない。

 

 いかに早く全国統一をするかという「速攻型」のアプローチをしがちだが、現実に徳川家康が天下をとったように、「人の一生は重き荷を負いて長い道を行くもの、急ぐべからず」が基本戦略になる。領地を治め交易をし、米やカネを十分にたくわえつつ兵や武将を育てる。その中には本城や支城の整備も含まれる。

 

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 本書はそんな戦国時代のありようを、蝦夷から琉球まで全国を網羅して綴っている。48編のエピソードのうちには、西南戦争戊辰戦争のものもあるが、大半は戦国時代のもの。1編5ページ程度の短い読み物だ。この時代には割合詳しい方だと思っていた僕自身、全く知らないエピソードもあって興味を持った。

 

 ・今帰仁城琉球統一戦

 ・長曾我部国親の土佐統一

 ・十三湊をめぐる両安東氏の戦い

 

 などは未知の歴史だった。加えて多くのエピソードから読み取れたものは、戦国大名に必須なものは優れた後継者だということ。「信長の野望」などのゲームでは山陰の弱い大名である尼子氏、稀代の梟雄尼子経久の時代には有力な大大名だった。経久の死後後継者の晴久は、大内義隆らの攻め立てられるが経久の遺産とも言うべき月山富田城に救われる。

 

 この時、大内の軍勢に加わっていたのが毛利元就。大内の領地を奪い有力大名にのし上がる。後継者たる長男隆元が早世したが、孫の輝元を小早川隆景吉川元春の両叔父が助けて毛利家を盛り立てる。さらに小早川隆景の養子秀秋は、関ケ原の合戦で重要な役割を果たす。

 

 48編のエピソードを見ると、北条氏康上杉謙信武田信玄などの名将・知将はあれど、その後継者に恵まれたケースが少ないことに気づく。その典型が豊臣秀吉ともいえよう。手軽に読めた「信長の野望」、面白かったです。