GAFAの一角「Amazon」、日本にも法人はあって中身は2つに分かれている。ひとつはE-comerceで、もうひとつはAmazon Web Service(要するにクラウド)だ。僕により近いのはBtoB領域のAWSの方であるが、両社に知り合いは多い。経団連で付き合いのあるE-comerceの人に「物流センター見学させてもらえませんか?」と頼んで、断られたことがある。
通勤時いつも見ていた小田原の巨大物流センターを見学する野望はそれで潰えたのだが、デジタルの巨人Amazonならさぞ凄い物流システムを持っているだろうと思っていたから残念だった。昔日系航空会社の手荷物バックヤードを見て、大手自動車会社の人が「弊社の30年前ですな」と言ったのを覚えている。それも20年近く前の事なので、最新の物流センターはどうなっているのか、興味は尽きない。そんな思いで手に取ったのが本書。著者の角井亮一氏は国内最大の通販物流代行会社イー・ロジット社のCEO、日本に上陸してきたAmazonに、国内企業がどう立ち向かうかを2016年時点でまとめたのが本書である。
著者が楽天・Yahoo・ヨドバシカメラ・アスクル・7/11・ゾゾタウンからカメラのキタムラまでの例を引いて強調するのは、
・ラストワンマイルに注力
・独自商品を持つべき
・店舗×ネット(オムニチャンネル)の活用
の3点である。日本の産業界としての重要課題だとは思うのだが、これらが提示される後半より、僕は筆者がAmazonの強みを分析する前半の方に興味を持った。曰く、
・同一価格、多品種少量の「書籍」からスタート(ロングテール理論適用が容易)
・ウォールマート等からロジスティックスの専門家をヘッドハント
・宅配ドローンや自走式ロボットなどに赤字累積しながら先行投資
という経営姿勢が優れているという。本書にはないが高級スーパーの「Whole Foods」を買収し、そこにネット注文品の受け取りロッカーを設けたのも、僕自身ワシントンDCで見ている。
テクノロジ面では「自動値付けボット」を開発、他社の値段をロボットがセンスしていて、どこよりも安く「自動的に値付け」するという。ビックカメラ等で「他社より高い商品があったら教えて」と連呼しているアレが、自動でできるのだ。物流は再重要インフラのひとつ、これからも業界戦争からめを離せませんね。