新城彰の本棚

ミステリー好きの自分勝手なコメント

「子ども庁」へのヒント

 「デジタル庁」に続いて、霞ヶ関横断の新組織「子ども庁」設置の議論が本格的に始まった。専門外なので詳しいことは知らないが、目的は人口減少を食い止めることだろうと思う。中国ですら人口減少の兆候が生まれていて、先進各国はおしなべて人口減少に悩んでいる。「女性の識字率が上がると、特殊出生率が下がる」のは真実だが、女性の学ぶ機会を削ぐなどあり得ないことだから、仕方のないトレンドである。

 

 もっぱら移民に頼って人口増を実現している米国と違い、先進国で唯一人口減少を食い止め特殊出生率を2.0以上に持ち上げたのがフランス。本書(2016年発表)はフランス人の夫とパリで暮らす高崎順子氏が、自らの出産・育児体験を経て、フランスの少子化対策のコアをまとめたものである。

 

 第二次世界大戦後、フランスはいち早く少子化対策に取り組んでいる。それは大戦で苦戦したのは、ドイツより人口で劣っていたからと考えたから。しかし「自由・平等・博愛」のフランス革命精神を堅持する中で、女性の社会進出は当然だったから「産まない自由」もあって少子化対策は上手くいかなかった。

 

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 それが好転するのが1990年代から、筆者によれば「社会全体が出産・育児に理解があり、応援しようという気運がある」とのこと。これこそが「子ども庁」に期待される政策効果だが、具体的に見ていくと、

 

・父親には14日間の産休制度がある。

 9割以上が取得し、拒否した企業には罰金が科せられる。この2週間、男性は家事をし、赤ん坊の世話をし「父親」に成長する。政府はさらに半年から1年間の育休を取得するよう勧めている。

 

・無痛分娩利用は80%以上

 「お腹を痛めた子」という概念はフランスにもあるが、出産後の育児の方が大変なので消耗しないために勧められる。産院には麻酔医が24時間常勤。もちろん無料。

 

・妊婦にお財布は要らない

 妊娠証明があれば検査から出産まで全額保険負担。妊娠は病気ではないと費用負担を求める日本とは違う。

 

・3歳未満の保育の充実(カッコ内は月当たりの費用)

 保育園(€470)、母親アシスタント(€880)、個人シッター(€2,000)が選択可能。

 

・3歳からは国家教育省の幼年学校に

 小学校入学前に「遊びながら学ぶ」ことで基礎教育を与え、格差是正も期待。もちろん無料。

 

 文科省の幼稚園と厚労省の保育園すら一体化できない日本、「子ども庁」への期待は高いですよ。