日本政府が掲げている社会目標「Society5.0」、狩猟社会・農耕社会・工業社会・情報社会ときて、次は「超スマート社会」を目指すべきというもの。産業界もこの主役は自分たちだと意気込んでいるのだが、本書によるともう一つの「5番目の社会」があるという。それは社会制度に着目したもので、原始共同体・奴隷制・封建制・資本主義の次に「社会/共産主義」が来るという。これを史的唯物論といい、共産党の根幹をなす思想である。
本書の著者福富健一氏は、現代史研究家。民社党・民主党・自民党で政務調査に携わってきた人である。本書の冒頭、
・欧米各国では、共産党は憲法違反。フランス共産党でさえ党名変更している。
・日本では党員30万人、国・地方議員は2,800名以上の「大政党」
・自民党の倍以上の個人寄付金を集め、「赤旗」発行などで潤沢な資金を持つ。
とあるのを見て、少々驚いた。第二次世界大戦以前は日本でも非合法、戦後も追放されていた時期もある。政党として認められてからも、野党共闘には入れてもらえない「共産党排除」の時代が続いていた。しかしそれが昨今「オール沖縄」の選挙などの例にあるように、崩れ始めていると筆者は警告する。
共産主義の政治は「民主集中制」にある。民主主義に近いように見えるが、中央で決めたことに地方・団体・企業・個人は従う義務を持つ。今の中国を見れば分かるように、強権国家になりやすい制度だ。21世紀を迎えて2004年に改訂された日本共産党の綱領でも、史的唯物論を背骨に民主集中制を目指して、
・日本を従属させるアメリカ帝国主義と労働者を搾取する日本独占資本を倒す。
・そのために民主主義革命を起こし、共産党が(連立の一員ででも)政権を獲る。
・社会主義的変革は生産手段の社会化である。
となっている。以前より多少現実的になっているとはいえ、天皇制は(議論を経て)廃止へ、日米安保は即廃棄、違憲の自衛隊は解消へ、大企業は政府が統制し労働者から搾取させないというものだ。
朝鮮戦争前夜にはスターリンが日本共産党に武装蜂起を促したのも事実、それゆえか公安警察が(オウム同様)常時警戒している団体でもある。米中対立の中では、習大人の指示によって何をするか分からない団体と言っても過言ではない。