新城彰の本棚

ミステリー好きの自分勝手なコメント

米軍が最大の犠牲を払った闘い

 76年前の6月末、3ヵ月に及ぶ連合軍の沖縄作戦は終了しようとしていた。日本軍10万人、連合軍15万人が参加し、45万人の沖縄住民を巻き込んだ闘いだった。住民の1/3が犠牲になったとも言われ、その傷跡は今でも沖縄の地に残っている。

 

 1944年10月、サイパンはすでに陥落しフィリピン戦線も帝国陸海軍いははかばかしくない戦闘が続いている。次は台湾か沖縄に来ると、だれもが予想し九州・沖縄に戦力を集め始めていた。そこにハルゼー麾下の機動部隊が襲い掛かり、沖縄の航空基地は甚大な被害を受ける。

 

 慶良間諸島など離島への侵攻も警戒すべきだが、大軍が上陸するとすれば北谷から嘉手納に伸びるビーチからしかない。陸軍は満州から転用した2個師団+αの戦力で、沖縄への着上陸を防ごうとした。米軍は翌年3月に来襲、日本軍の特攻機に手を焼きつつも、圧倒的な火力・機動力で沖縄に迫った。

 

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 結果として日本側は軍人・軍属の犠牲者は10万人に達し、米軍も2万人の戦死者を出した。第10軍バックナー司令官も戦死している。これは3ヵ月間の一戦区の犠牲者としては、米軍最大の人数である。防衛司令官牛島中将は、彼我の戦力の差から万一勝機があるとしたら「米軍が攻勢に疲れ、犠牲の多さに厭戦気分を発した時」と見ていたようだが、実際その寸前まで相手を追い詰めていた。

 

 本書は海軍軍令部員だった吉田俊雄元中佐が記した、多くの太平洋戦記の1冊。実際に沖縄戦の跡をたどり、生き残った人へのインタビューの交えて構成したものである。僕自身陸戦のハイライトだった嘉数高地や前田高地(Hack-saw Ridge)の戦跡には足を運んでいる。後者は、メル・ギブソン監督で映画にもなった激戦地だ。

 

浦添城址とHacksaw Ridge(後編) - Cyber NINJA、只今参上 (hatenablog.com)

 

 逃げ場のない島ゆえ、多くの民間人が犠牲となったのは痛ましい。日本軍の非人道的な行為もあったが、民間人が亀甲墓に籠るくらいならともかく、竹やりをもって米軍に挑むなどという不合理なことも横行したと本書にある。その後長く米軍統治の時代があったことも含めて、沖縄県を日本の中で特殊な位置を占める原因でもある。

 

 大好きな旅行先でもある沖縄、定宿のある宜野湾だけでなく、本書には牧港・浦添・天久などの戦闘が描かれています。そんな過去があったこと、忘れないようにしないと。