新城彰の本棚

ミステリー好きの自分勝手なコメント

「安い国」で暮らすということ

 先月後半から、日経新聞が「安いニッポン」と題した連載を始めた。その主張はおおむね本書のそれに沿ったものだ。2019年末に「年収1,400万円は低所得」とする記事が出たが、IT産業らが隆盛な西海岸ではある意味当然のこと。これに反して日本は「年収1,200万円は高所得だから児童手当打ち切り」をしている。

 

 2020年発表の本書は、年収だけではなく物価も企業価値もとてもGDP3位の国とは思えない凋落ぶりだと、数々の指標を挙げて説明する。筆者の加谷珪一氏は経済評論家、記者・投資業務・コンサル業などを経て、日本企業や社会の課題に迫る論評を発表している。

 

・日本人の年収は、発展途上国並み

・世界一ディズニーランド入場料が安い国

・「億ション」は富裕層しか買えない

・生産性は何十年も伸びていない

・為替問題もあるが、円高にもっていけない国力が問題

 

 などの主張はうなづけるもの。僕も少なくとも日本政府が「輸出産業のための円安誘導」をしているのであれば、やめてほしいと思っている。

 

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 昨今の「COVID-19」騒ぎもあってインバウンド需要が落ち込んでいるが、そもそも「中国人の爆買い」は、モノがいいというよりは「日本だとこんなに安いぞ~」というインパクトがあるから。かつて僕ら夫婦もソウルで爆買い・・・などしていたのだが、今は横浜の「ドンキとカクヤス」で喜んでいる次第。もっとも宿泊している「オークウッド・スイーツ」などは、欧米人狙いのやや高いコンドミニアムだが。

 

 政府は「デフレ克服」を目指してきたが、ただインフレになればいいというものではない。筆者は原材料や輸送費・(海外の)人件費の高騰でインフレが起きそうで、これが「不況下で賃金は上がらない中の物価上昇:スタグフレーション」に成りかねないと警告する。「最低賃金上げ」くらいの対症療法では、意味がないし。

 

 ではどうすればいいかというと、筆者は、

 

・サラリーマン社長を一掃し、プロ経営者にする

・社内失業を解消し、そのために統廃合・M&A等を加速する

 

 べきだという。それは正しいのだが、プロ経営者でも「正社員をクビに出来ない国」になっている状況をどうするのか、本書には答えはない。クビにできないから非正規を増やしたわけで、小泉・竹中改革の方向性は間違っていなかったはず。筆者に会えたら、そのあたり議論してみたいですね。