新城彰の本棚

ミステリー好きの自分勝手なコメント

デストロイヤーの誕生

 頭のどこかで「サピア&マーフィー」という共同作者名を覚えていた。何を読んだのか、どんなストーリーだったのかも覚えていない。ところがある日、いつものBook-offで本書を見つけた。著者名は「ウォーレン・マーフィー&リチャード・サピア」となっている。あ、これこれと思い。裏表紙の解説も読まずに買ってきた。

 

 帰りの列車で解説を読み、本書が映画化もされた「デストロイヤー:レモ・ウィリアムズもの」の第一作だと分かった。分かったはいいのだが、若い頃読んだのかどうか記憶は戻らなかった。

 

 タフで愛国心があり家族を持たないブルックリンの警官サム・メイキンは、自分の葬儀の映像を見せられる。整形手術もされていて全くの別人となった彼は、大統領直属の「暗殺人」に採用されたのだ。彼を含めた特殊機関CUREは、表には出せない米国内の闇を葬るのが役割。米国を治療(Cure)するのがその名の由来だ。

 

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 格闘も射撃の腕も一流の彼だが、指揮官スミスはそれでは不十分だとして北朝鮮から暗殺者の師範チウンを招いてレモを鍛える。チウンの家系は、歴代ツタンカーメン王を暗殺するなど地球の帝王史を塗り替えてきた。呼吸術を極め水の上を歩き、至近距離から発射された銃弾をよける<シナンジュ>という技を使う。腕を一振りすれば、相手は自然死としか思えない状況で死ぬ。

 

 もはやSFだが、チウンの言動が面白い。米国人は死んだ牛を食い、肉は胃の中で腐っているとけなす。オーガニックのコメは喜んで食べるが、日本人がコメに酢を混ぜるのは卑しい食べ方だと非難する。アジア人は美しいが、日本人は不誠実、中国人は怠慢、タイ人はのろく、カンボジア人は頭がおかしい、ビルマ人は非常識で強欲・・・と朝鮮民族こそが唯一の優良民族という。

 

 レモの訓練がまだ不十分なうちに、CUREの最初の仕事が降ってきた。米軍への武器供給を担う巨大産業「グローブ社」が担当将軍と組んで私欲をむさぼっている情報が得られたのだ。レモは軍事演習場にのりこみ、グローブ社社長と将軍を始末しようとするが・・・。

 

 米国で60冊以上が出版され、3,000万部以上が売れたという大ベストセラーだそうです。ただ、どう考えてもミステリーでもアクション小説でもありませんね。SF・ファンタジーだと思います。