新城彰の本棚

ミステリー好きの自分勝手なコメント

市民財団所長ジェニー・ケイン

 1980年代には米国で、女性を探偵役にした女性作家が何人もデビューしている。

 

サラ・パレツキー V・I・ウォーショースキーもの

スー・グラフトン キンジー・ミルホーンもの

 

 彼女らに少し遅れ1985年に本書でデビューしたのが、ナンシー・ピカードである。作者は「自分の能力に自信のあるヤワではない女性探偵」を考えて、ジェニファー(ジェニー)・ケインを創造した。舞台はマサチューセッツ州ポート・フレデリック、ボストンに近い港町である。ジェニーはこの市で、雇われ市民財団所長をしている。集まる寄付をどう市民の役に立てる事業に廻すかが、彼女の仕事だ。

 

 嫌われ者の父親と若い義母、精神病院に入っている母親、ウマの合わない妹という家族がいる30歳のスリムな女性だ。地元の不動産屋が貸してくれた全長42フィートのトロール船を、アパートメントに改造して住んでいる。恋人のジェフリーは30歳代のバツ2の刑事、お互いのアパートを行き来する仲だが、結婚には踏み切れていない。

 

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 ポート・フレデリック市では、長年ロブスター養殖をしていた老人が海で行方不明になり、遺産相続人もヴェトナムで戦死していたことから養殖場を買い取り、その再開発計画を進めていた。しかしその起工式の日、建設工事の現場監督の男が自身の軽トラで式場に突っ込み、市長らを追い散らした上で桟橋から転落死してしまう。

 

 この再開発工事は市から諮問を受けた委員会が計画をまとめたのだが、その夜委員会委員の建築家の小屋が放火され、建築請負人の車もタイヤを斬られる。さらに死んだはずの遺産相続人が生還し、建設計画に待ったをかける。市長以下再開発に賭ける意気込みが大きいだけに、事態は深刻度を増す。

 

 死んだ現場監督の男と揉め事を起こしていたジェニーは否応なく事件に巻き込まれ、捜査にあたるジェフリーから軽トラのブレーキに細工がしてあったことを聞き、事件解決に乗り出す。米国北部にあるとはいえメキシコ湾流の影響で、この市の初夏は蒸し暑い。そんな中、ジェニーは諮問委員会のメンバーらから事情を聴くのだが、嫌われ者の父親が市に戻ってきて、あまつさえ容疑者にされてしまう。

 

 作者の文体は読みやすく、300ページあまりがとても短く感じられました。特にすごいトリックもアクションもないのですが、気楽に読めるミステリーだと思います。ただ、あまり多くは翻訳されていないのが残念ですが。