新城彰の本棚

ミステリー好きの自分勝手なコメント

正論がどこまで浸透する?

 秋の衆議院議員選挙に向けて、永田町はあわただしさを増している。正直「COVID-19」感染拡大より、選挙の方が忙しい状況だ。菅政権の「五輪強行」と「COVID-19」対策への批判が集まり、公明党はもちろん自民党内からも糾弾の動きが出てきた。こうなると普通は「菅おろし」の風が吹くのだが、今回はその気配がない。二階幹事長など「総理の続投を求める声が大きい」と発言、「どこの国の話だ!」と炎上中である。

 

 今は「火中の栗」を拾う必要はないとの思惑か、現行閣僚でない岸田氏なども沈黙を守ったまま。初の女性総理をと推される野田氏も、総裁選挙への推薦人が集まるかは不透明だ。そこで注目され始めたのが、本書の著者石破茂元幹事長である。何度も総裁選に挑戦して敗れてはいるが、一定の党内支持層はお持ちである。

 

 本書は2014年、安倍内閣が「集団的自衛権」を行使できるとする閣議決定をしたころ発表されたもの。同時期に専門家が解説した「日本人が知らない集団的自衛権:小川和久著」はすでに紹介している。

 

「集団」と付いているゆえの混同 - 新城彰の本棚 (hateblo.jp)

 

 それとの重複は省き、著者がどのようなスタンスで憲法や国政に向き合っているかを知ることができる部分を再読してみた。

 

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 まず、著者はガチガチの改憲論者ではない。「自衛隊は必要で、その存在を憲法に明示したい」との希望はあるものの、国民の議論が熟す前の早急な改憲には消極的である。本書の表題にある「集団的自衛権」にしても、現行憲法下で全くできないわけでもないという。それは戦後日本政府の防衛に関するスタンスが変遷したことからも正しいという。

 

1)1946年には「一切の戦争はしない」としていた。

2)1950年には「自衛権はあるが米軍に肩代わりをしてもらう」と戦力不保持の状態。

3)1954年には「戦力ではないが自衛隊があり個別自衛権はある」と変わる。

4)1959年には「集団的自衛権もあるが、行使できない」と言う。

5)1972年には「自衛権の発動は必要最小限、集団的自衛権はあるが使わない」となる。

6)1981年には「集団的自衛権憲法上行使できない」と再確認。

 

 要は朝鮮戦争ベトナム戦争湾岸戦争などの国際情勢で、微妙に言葉が変ってくるということ。慎重に正論を伝える著者の姿勢は評価できると思います。さて、政局はどうなりますかね。