本書は政治ジャーナリストの権化、田原総一朗氏が2019年に発表した(ある種の)回顧録。マスコミ渡世60年の筆者が、政治家・経営者・思想家・科学者などにインタビューした中で、インパクトの強かったことを28編収めたもの。前半の政治家編に、正直目からうろこが落ちる思いをしたことがいくつも記載されていた。「朝までナマTV」では司会者として机をたたいで怒鳴ることもある筆者で、???と思う発言もいくつかある。それらの謎のいくつかは、本書で解けた。
筆者自身は「護憲」ではない。憲法と自衛隊の存在は矛盾していると思っている。しかし、現時点では「それでいい」らしい。理由は、
・軍隊は戦えれば戦ってしまう。戦えないから日本は平和。(竹下登)
・集団的自衛権を認めて以降、米国は憲法改正を言ってこない(安倍晋三)
今では憲法改正を党是とする自民党議員より、ハト派の学者が憲法9条2項削除を求めている。それは戦力ではないけれど戦闘力のある自衛隊が「護憲」上危険だから。2項が無ければ、自衛隊の在り方議論ができると彼らは言う。
2)共産党の革命構想
20世紀の終わりまでは日本共産党は「暴力革命」を是としてきた。これを見直し、今の志位委員長につないだのが、不破哲三。迷いぬきながら、自衛隊も天皇制も認める方針転換をした。党内は今でもこれらの点では一枚岩ではないが、立憲民主党などにはない「調査力」をこの党は持っている。
3)北方領土問題
日米地位協定があるので、仮に2島返還になったら、そこに米軍の基地ができる可能性がある。ロシアはそれを看過できないので返還交渉は進まず、日露平和条約も結べない。一方日本が自前の軍事力だけで防衛ができる「自立」をしないと、地位協定の破棄も難しい。
4)移民問題
「日本会議」はじめ、移民絶対反対との勢力が強い。しかし国内は労働者不足で経済界からは海外労働者受け入れ要望が強い。そこで技能実習生などの受け入れをして、対応している。難民認定のハードルが高いのも、この理由。
政治家等が実名で登場、本音を語った内容は、実に面白い。筆者は最後に、日本国民全体に「どうするか?」と問うているのが2点。
・憲法9条