新城彰の本棚

ミステリー好きの自分勝手なコメント

メイスン先生の法廷術講座

  本書も、E・S・ガードナーの「ペリイ・メイスンシリーズ」の一冊。このシリーズは法廷シーンが売り物で僕もそれを期待して読むのだが、本書は冒頭短い法廷シーン、最後の100ページの法廷シーンとそれが2度も出てくる「お買い得作品」である。

 

 所要である判事を訪ねたメイスンが、その判事が裁いている法廷に顔を出すシーンから始まる。裁かれているのは宝石泥棒の罪を着せられた赤毛の女、弁護するのは国選の少壮弁護士ニーリイ。うまく反対尋問ができないニーリイに、メイスンは昼食時にアドバイスを与える。曰く、

 

・証人を攻めたてろ、彼に考える暇を与えるな。

・どんな質問でもいい、浴びせ続けろ。

・彼が言ったこと全てを覚え、弱点がないか探れ。

・彼が予期する順番で質問してはいけない。視点を変えて聞け。

・目の隅から陪審員の様子に注意しろ。何に心を動かされたか・・・等々

 

 その結果経験の薄いニーリイでも、女の無罪評決を勝ち取ることができヒーローになれた。しかし礼を言いにメイスンのもとを訪れた彼女には、さらなる試練が待っていた。今度は何者かが彼女の部屋に真新しい拳銃を置いて行き、車を運転する彼女に迫ったのだ。彼女は2発拳銃を撃って襲撃者を追い払うのだが、後にその道の崖下に落ちた車から拳銃で撃たれたおとこの死体が見つかる。しかも死体は彼女を昔騙した詐欺師だった。

 

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 動機も機会もある彼女は、今度は殺人容疑で逮捕され予審に掛けられることになる。逮捕前に一日彼女を隠したメイスンは、拳銃(.38口径コルト・コブラ)が2丁あったことをy突き止める。ニーリイと共に彼女の弁護に立ったメイスンは、ニーリイを実地教育するように検察側を追い詰めていく。

 

 前回紹介した「危険な玩具」同様、凶器の拳銃が事件解決の大きなカギになる。偶然だろうが命を奪った銃弾は潰れて施条痕が判別できない。2丁の拳銃から発射された複数の銃弾を巡って法廷は白熱する。

 

 メイスンが優秀だが法廷が不慣れなニーリイに、「なんでもいいから異議をとなえろ。押し黙っていては検察にも判事にもなめられる」となどと諭すのが面白い。あ、そうだな。僕が高校生の一時期法学部を志望したのは、こういう講座が受けたかったから。まあ、本書で読めたことで満足しましょうかね。