米国バイデン政権の支持率が下落傾向、某誌などは「支持率暴落」とまで書いている。きっかけはアフガニスタン撤兵のゴタゴタなのだが、僕はいずれやらねばならぬことだから政権の決断に拍手を送っている。バイデン政権を悩ませている問題はアフガニスタンや「COVID-19」以外にも多く、支持率低下はそれらの総合的な結果だろうと思う。
2019年発表の本書は、日経のワシントン支局特派員だった筆者が、トランプ政権誕生以降の在勤地を取材してまとめたもの。テーマは米国社会をむしばむ「4つの分断」である。
1)富の分断
2017年の調査では、上位1%の富裕層が40%の富を独占しており、中下位60%の人々は2%しか持っていない。どの先進国も経済格差は広がる傾向だが、米国ではそれが顕著だ。デジタル産業など中心に企業業績は好調で、CEOは一般従業員の390倍もの報酬を得るとある。
2)人種の分断
WASPではあないユダヤ人やイタリア系などを入れても白人の比率は60%ほど、黒人は15%ほどで増えていないのだが、ヒスパニック・アジア系は急増している。「白黒の国」ではなく「虹色の国」になってしまった。2017年には全米のヘイトクライムは7,000件を超えている。
3)政治の分断
2大政党制ゆえだが、両党の支持者は接するメディアも全く違う。オピニオンは両極端に振れがちだ。加えて政党に寄付する人を見ると、全体の0.01%が30%ほどの献金を行っている。エリート・富裕層が大口ドナーとなり、政治を動かすことができる。
4)世代の分断
高齢化が進み富が高齢者に偏在し、政治が若者より高齢者を重視するようになっている。社会保障費が膨らんで、そのツケは将来を担う人たちの肩にかかる。教育費も高騰していて、大学生は奨学金など3万ドルほどの借金を背負って社会人になる。
1940年生まれの米国人が、親の年収を上回る可能性は95%だった。1980年生まれでは、それが50%に下がった。もはや「アメリカン・ドリーム」はごく限られた人のものだ。驚いたのは政府債務は20兆ドルと言われているが、年金債務など隠れ借金があり実際は200兆ドルということ。
トランプ政権や「COVID-19」禍がその傾向を強めたこともあるが、それ以前から病巣は米国全土に広がっていた。これでは、まっとうな市民によるまっとうな民主主義は難しいでしょうね。