新城彰の本棚

ミステリー好きの自分勝手なコメント

Green政策の処方箋

 菅内閣の基本方針は「Green & Digital」だった。現下の国際情勢における方針として異論はないのだが、どうもGreenの方は僕は苦手だ。とはいえ食わず嫌いは良くないので、少々古い(2008年発表)書だが読んでみた。発表の前には「愛・地球博」や「洞爺湖サミット」があって、現在同様市民のエコ意識は高まっていた。ただこの後、リーマンショクがあってエコどころではなくなり、日本では東日本大震災と福島の原発事故があって、いい意味でも悪い意味でも「地球環境」を見る市民の目は厳しくなった。

 

 この夏も世界規模で天候不順・自然災害が相次ぎ、「脱炭素」の声は世界中で高まっている。ただ筆者は「脱炭素(CO2削減)だけでは狭すぎる」という。もっと大きく地球や人類の未来を考え、再設計することが必要だというのが本書の主旨。特に日本については、

 

1)太陽系エネルギー文明の最先端モデル実現

2)生物・文化・言語・ライフスタイル等の多様性尊重

3)21世紀の「工」学を追求(工の字は天と地を人が結ぶ形を表わす)

 

 やや抽象的だが、本書にちりばめられている「環境社会への処方箋」を読み解くと、主張点が見えてくる。

 

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 まずエネルギーコストはゼロに出来るという点。太陽が地球にくれるエネルギー総量は年間17,000TW、人類が年間に使っている総量の1,000倍ある。だから本来地球にエネルギー問題は存在しない。日本は食糧や燃料の多くを輸入に頼っているが、国土の自然エネルギー利用で自立が可能とある。

 

 政治的には「社会主義は経済の真実を市場に反映できず敗れた。資本主義は地球生態系の真実を市場に反映できずに敗れるだろう」と述べ、新自由主義への警鐘を鳴らしている。カネでの計測方法が間違っていると言いたいようだ。

 

 東京(江戸)については、日本史上初めて河川の海への出口に作られた都市。より大きな気候変動に対応するため「水没しても暮らせる街」を目指すべきとある。資本主義は「人間不信の文化」だったとあり、デジタル革命後の社会は「ITが人をバカにせず、より調和を図れるようになる」ともある。

 

 解説に「処方箋」とあったのですが、どうしてもここまでしか抽出できませんでした。本書発表から13年、事態は「処方箋」のようには進んでいないと思います。