昨日「日本人は知らない中国セレブ消費」で、中国のプチ富裕層が何を求めているか、価値観はどうかなどを紹介した。この書は2017年のものだが、内容は全部「都市戸籍」を持っている人のこと。以前「戸籍アパルトヘイト国家・中国の崩壊」を紹介した川島博之氏が、同書の1年後2018年に発表したのが本書。
前著同様、中国崩壊危機を唱えていて、それは少し割り引いて考えないといけない(例え不動産バブルがはじけても)。しかし、今回はデジタル技術(ネット上のデータや監視カメラ)を最大限に使った監視社会と化した都市に住む人たちの声を集めていて、これは参考になる。筆者はかつて中国に農業指導で何度も渡航し、現地に多くの知り合いがいる。残念なことに前著発表以降名前が当局のブラックリストに載ったらしく渡航できないが、現地からの情報は入ってくる。曰く、
・2017年から大学、大学院で英語の文献を使用した教育が事実上禁止された。
・当局に睨まれた北京大副学長が汚職で逮捕されたが、この程度のことでと驚いた。
・最近不景気で就職が厳しい、外国サイトを見たとわかると睨まれ不利になる。
・某所にすべてのPCを管理しているセンターがあるとの噂がある。
・都市戸籍があっても北京等でないと格落ち、満州出身の私はそんな町には行けない。
・数億円するマンションを買うか、高級公務員になるか、良い縁組くらいしか無理。
などとの悲鳴が聞こえてくる。地方公務員の大卒での初任給は約5万円、アパート賃料も同じくらいで食べていけない。北京等なら給料は倍になるが、賃料も倍になる。もちろんアパートを買うことなど不可能だ。
上記の「不景気」の意味だが、あるエリート銀行マンが言う。
・以前は給料もいいし車も会社支給、毎日2度の宴会を(公費で)していた。
・国の関与が強くなり、外国との情報網が遮断され、業績が上がらない。
・上司が政権に近い人物になり、車も宴会も、仕事のやりがいもなくなった。
最近話題の「英語禁止」や「企業への圧力」は、すでに数年前から始まっていたということだ。筆者は前著で「中国人は都市戸籍の4億人だけ」と言っていたが、1年経って「一部のエリートとそれに忖度する人々(1億人?)」だけの国になったようだ。
上海から帰国したばかりの人の話も分かりますが、どうも実態はもう少し厳しいようですね。