新城彰の本棚

ミステリー好きの自分勝手なコメント

地方議会のお仕事

 本書は岩手県知事時代「改革派知事」として鳴らし、総務大臣も務めた増田寛也氏の書き下ろした骨子を菅沼栄一郎記者(朝日新聞)が細部を詰めて出版したものである。発表は2010年、国政は民主党政権で、石原東京都知事、橋下大阪府知事というから「もう10年経って状況は変わったな」と思わせる。

 

 ただ日本の課題としては変わらない部分も多く、特に本書のテーマである「地域主権地方分権」についてはほとんど進展がないと言ってもいいだろう。「地域のことは地域で決める」と多くの政治家が言うし、反論する人もまれだ。しかし現実には進まないとあとがきにある。特に今のような「COVID-19」騒ぎでは、国がちゃんと決めてくれないとという知事さんたちの声も大きい。

 

 基本的人権にかかわるような規定を、地方でバラバラに作るわけにはいかないのはよくわかる。しかし地方によって異なることは一杯ある。それでは最低時給はどうなのか?意見が分かれるところだろう。この線引きは難しい。

 

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 例えば昨今不評な「電子自治体」、特別定額給付金の申請や給付でトラブルが相次いでいるが、これなどはマイナンバーに銀行口座を紐づけて国から一斉給付できないものかと思った人も多いだろう。現実には自治体ごとのシステム(ITに限りませんよ)がバラバラで連携できていない。「地域のことを地域で決める」と全国一斉が難しいのだ。

 

 もちろん本書にあるような「改革派知事・市長」のトライアルには敬意を表するが、単なる国と地方の権限(縄張り)争いに市民から見えるという指摘は当たっていると思う。本書で一番興味深かったのは、地方議会のあり方。結構なコストをかけて選挙をし、議論の場を作り、行政の在り方を決めていくべき組織だが、

 

・首長提出の(地方)議案の97%以上は無修正で可決、成立する。

・本来やるべき地方税の税率変更を、議会ができる余地は少ない。

 

 なので、実質何の役に立っているのか分からないとある。ただ国会(衆議院)は首相しか解散権がないが、地方議会は一定数の有権者の署名が集まればリコールできるとあった。これは僕が知らなかったこと。役に立たない議会なら、リコール。署名を集めるのが大変だったら「オンラインで署名集め」でOKとすれば、もっと地方議会に緊張感がでるなと思いました。