新城彰の本棚

ミステリー好きの自分勝手なコメント

コスパが良ければ整備する

 2018年発表の本書は、池上彰氏による真相究明シリーズの「核兵器」編。ついに「核兵器禁止条約」は発効したのだが、実際に核兵器を持っている国は一切参加していない。「核拡散防止条例」というものもあり、原則として現在核兵器保有国以外は核兵器を持てないのだから、前記条約は実効性をもつかどうか微妙だ。

 

 唯一の被爆国でもあり、「非核三原則」を掲げながら、被爆ヒロシマ出身の総理を持ちながら、日本は「禁止条約」を批准していない。現実として国内米軍基地には、恐らく核兵器は存在する。また「米国の核の傘」の下で護られている国としては、批准しづらいことがあるのだろう。

 

 本書は北朝鮮の核実験~核武装への話題を皮切りに、第二次世界大戦中の米国ら(これにはドイツ、日本も含まれる)の核兵器の研究開発経緯から、戦後冷戦期の米ソ対立等、核兵器の歴史が紹介されている。本書のテーマは「世界から核兵器が無くならないのはなぜか」だが、答えとしては、

 

核兵器は重要な「外交カード」になっている。

核兵器そのものが「ビッグビジネス」になっている。

 

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 なのだが、かなり使いづらい(戦略核などは実質使えない)兵器であることも確かだ。そんなものをなぜ保有するかと言えば「対立相手も持っているから」というのが実態。

 

 分かり切ったことなのであえて筆者は書いていないのだが、核兵器はこれまで非常にコストパフォーマンスの高い兵器だったというのが「普及」した理由。冒頭紹介された北朝鮮の戦略は「通常戦力ではとても敵わないから、手っ取り早く核兵器ICBMを開発配備する」というものだ。

 

 米ソ冷戦からSALTのような戦略核兵器削減条約が結ばれたのも、実際には使えない(相互確実破壊してしまう)から、管理コストもかかるし減らしていこうやというのが理由。今、必死に増産しているのは、大国では中国だけだ。

 

 問題はこの「コスパの良さ」が、大国間いつまで続くかということ。例えばサイバー攻撃を食らって自爆するリスクがあれば、防御にもっとお金がかかる。そのうちに「あほらしいから止めよう」となるかもしれない。

 

 ただ問題として残るのは「自爆テロしてもかまわないくらいの組織」。報復で自国(組織)が全滅してもいいから、強い攻撃力を持ちたいというヤカラが出てくること。大国同士のような「交渉」は不可能ですから、これだけは防がないといけませんよね。