新城彰の本棚

ミステリー好きの自分勝手なコメント

秀逸な8文字熟語

 総選挙で「日本維新の会」が躍進し、憲法改正勢力が大きくなったと海外のメディアが伝えている。現に「維新」は来夏の参議院議員選挙までに憲法論議を進めたいと、政府与党に申し入れていると聞く。しかし現実は甘くあるまい。与党のうちでも公明党は消極的だし、自民党にも憲法擁護派はいる。

 

 それよりも「もう憲法はこのままでいいんだ」という雰囲気が、外交通からは特に感じられる。確かに「COVID-19」禍で「緊急事態条項」の重要性は高まったが、いわゆる「9条問題」は焦眉の急ではなくなっているのだ。それはすでに安全保障法制などで、集団的自衛権が(限定的にせよ)認められて、自衛隊は海外で闘えるようになっているのだから。

 

 2017年発表の本書は、元陸上幕僚長だった冨澤暉氏が、自衛隊の現場の視点から日本の防衛の現状を記したもの。冒頭、憲法9条に関する記述があり、戦争・武力の行使は国際紛争解決には行わないとした「戦争放棄」は、実は多くの国が加盟しているパリ条約(1928年の通称ケロッグ・ブリアン条約)に盛り込まれている内容と同じだとある。つまり、パリ条約に加盟している米欧露他の国と、日本は同じ条件だということ。

 

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 ただしこれまでは、日本の「集団的自衛権」と国連などの「集団安全保障」論議がズレていて、日本人が「海外で闘えない」と思い込んでいた。それが先ごろの「安全保障法制」で整理されたので、無理に憲法改正をする必要がなくなったわけ。これは、TVでも田原総一朗氏が、安倍(当時)総理から聞いた話として紹介していた。

 

 本書は上記「集団的自衛権」と「集団安全保障」の整理や、自衛隊の海外活動(ペルシャ湾掃海・サマーワの警備・アフリカ等でのPKO)などに触れた後、陸海空の自衛隊の内情も紹介している。面白かったのは、3軍を表す8文字熟語。

 

陸上自衛隊「用意周到・頑迷固陋」

海上自衛隊「伝統墨守・唯我独尊」

航空自衛隊「勇猛果敢・支離滅裂」

 

 なんとなくだが、3軍の特徴が分かったような気がした。その他、示唆に富む記述も多い。曰く、専守防衛は軍事的に成り立たない・情報を軽視しがちな日本人・中国の軍事的台頭には時間がかかり当面は米国1極体制維持・・・。

 

 憲法関連の勉強を少ししたのですが、改正は急迫ではないと知って少し安心しました。政治エネルギーがものすごく必要なのですから。