先の総選挙で「改憲派」の勢力が伸び、憲法改正論議(少なくとも来夏の参議院議員選挙までに国民投票を:維新の会)が高まってきている。ただ実際には国民投票まで行くのは難しいような気もする。僕自身ずっと「改憲派」だったのだが、このところいくつかの書を読んで、9条改正にはこだわらなくなっている。それは集団的自衛権を認めたことで、自衛隊は海外で闘えるようになったと言われたから。緊急事態条項を付けることは(「COVID-19」禍もあって)必要性は感じるのだが、無くてもクリアできたからいいか~とも思えてきた。
第二次安倍内閣で憲法論議が盛んだった2018年に発表された本書は、憲法学者の長谷部恭男教授が記した「わかりやすい憲法論」。「はじめに」から改憲の必要なしとの論調で、ああよくある護憲の憲法学ねと思ったのだが、読み進むうちに「憲法墨守」の話ではないなと気づいた。
1.緊急事態条項の新設
2.個人から家族へ
3.自衛隊の国軍化
憲法改正のポイント - 新城彰の本棚 (hateblo.jp)
であるが、本書はこの1と3の点について不要もしくは危険な改憲議論だという。(2については言及もしてもらえないのかも)
◆緊急事態条項
これまでも、時の政権が必要と考えた時は「超法規的措置」を取ってきた。あえて閣議決定をすれば「なんでもできるようする」条項は無くていいし、悪用される危険がある。
◆自衛隊の国軍化
国が攻撃されたら防衛するのは当然の事、国軍化を明記すれば今まで「ネガティブリスト」で管理していたものを「ポジティブリスト」で管理するようになり、リストにない行為がなし崩しに実行されかねない。
今は「戦力はこれを保持しない」となっているが、独立国家で防衛力を持たない国などない。自衛隊は憲法違反かというと、そうではないと筆者は言う。憲法は他の法規と違い「出発点はゼロ」なのだとある。例えば「表現の自由を保障する」とあっても、誹謗中傷が過ぎれば「保障」されない。つまり憲法は墨守するものではなく、ベースを定めるもの。時の政権が「誹謗中傷は罰する」として、市民に説明責任を果たせば憲法の文言には拘らないということ。
だから自衛隊は「戦力」であっても、政権が説明責任を果たせば違憲ではないのだ。なるほど、これが憲法学の入り口かと、妙に納得してしまいました。