新城彰の本棚

ミステリー好きの自分勝手なコメント

この国の本質は「外華内貧」

 韓国では来年の大統領選挙に向け、史上最も汚らしい選挙戦との揶揄される候補者間のけなし合いが続いている。国を二分する選挙戦なのは確かなのだが、なぜこんなことになるのか不思議な思いをして本棚から引っ張りだしたのが本書。

 

 まだ韓国がOECDに加盟したばかりの1997年の発表で、著者は韓国生まれのジャーナリスト池東旭氏。韓国日報経済部長を経て「週刊日韓ビジネス」を創刊した人。本書で韓国の近代史を整理しようとしている。

 

 朝鮮半島は歴史的に収奪され続けるエリア、中国の王朝は再三来襲し、蒙古族の元は日本攻略の賦役を篤くこの地に課した。「神風」により日本近海で沈んだ資産の多くは、半島から収奪されたものだった。その後も倭国(豊臣軍含む)などに侵攻され、国内は両班・平民・奴婢といった身分制度が定着した歴史が長い。両班文民官僚・軍事官僚)の中では文民が優勢で、軍民は軽く見られていた。

 

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 筆者は、韓国が3度目の「開国」を迫られているという。最初は1800年代末、強国日本の圧力で開国させられたこと。その後、日露戦争などを通じて日本に併合されてしまう。第二の解放は日本降伏の後の米国支配、いずれも韓国内は何の準備もなく開国することで翻弄された。

 

 そして今(20世紀末)、グローバリズムという第三の開国が目の前にあるというのだが、今となってみると韓国は日本より上手く「Global & Digital」の時代に対応している。ただ、その結果貧富の格差は広がり、これも日本の比ではない。その遠因は本書言う「外華内貧」。長年付近の強国に収奪され続けたため、時の政権や権力者は内外に対して華やかに見せることがうまいが、その内実は貧しいということ。

 

 「日帝」が去ったあと、まず族閥支配の時代があり、次に軍閥の時代、そして財閥が台頭してくるのだが、いずれも庶民の事は顧みず、自分たちの私腹を肥やし保身に走ったとある。歴代大統領が退任後逮捕、起訴されることがそれを証明している。ちなみに北朝鮮はというと、まだ族閥支配時代のままだという。

 

 権力者には、血縁・地縁などを頼りに人が群がる。排除された人たちは「怨」を持ち、権力交代でうっぷんをはらす。どの国でもその傾向はあるのだが、それが顕著なのがこの半島だとある。

 

 扱いにくい隣人の本質、うなずけるものでした。