2020年発表の本書は、半世紀にわたり日本を取材してきた伝説のジャーナリスト、ヘンリー・S・ストークス氏が、日本メディアの問題点を指摘した書。筆者は、
・ロンドン・タイムズ
の東京支社長を歴任した人。題名は「新聞の大罪」となっているが、それは筆者が新聞業界の人で、その行方を憂えているからに過ぎない。内容は、インターネット版を含めた全てのメディアに通じるものだ。筆者は、
・開戦の詔勅
・リットン調査団報告書
などの報道事例を引いて、もともと日本の大新聞が、調査能力に欠け、海外報道を横流しするだけなのに、国民を煽る傾向があり、最近「スピン報道」という言葉があるように偏向してきていると批判する。また明治期に誕生した日本の新聞は、不平士族が立ち上げたものが多く「民衆を指導する」という上から目線のDNAが残っている。
日本(国民)自体も「情報戦」に弱く、外国からいいように操られるとも嘆いている。例として挙げられているのが、国際連盟脱退や南京大虐殺である。偏向報道の例に挙げられたのは、沖縄の2紙。先月も沖縄人が両紙を批判している書を紹介したが、本書も両紙は完全に中国に操られていると指摘する。
象徴的なのが「辺野古問題」だが、辺野古周辺でピケを張っているのはほとんど地元の人ではない。地元の人は「他に産業もなく、基地は必要」と言う人もいるが、メディアはピケには行っても、彼らの声は聞きに来ない。一部の意見が両紙を始めとするメディアの媒介によって、沖縄県民の総意に化けてしまっているとの指摘だ。
その「総意」を汲んで、故翁長知事(当時)は国際会議で「沖縄は植民地だ」ととれる発言をして、中国を狂喜させた。現在の玉城知事も、意識してかどうかは別にして、その路線をひた走っている。
翻って「日本の新聞」を再生するにはどうしたらいいか、本書にはいくつかのヒントが載っている。
1)報道の原点に立ち返り、調査能力を磨くこと
2)一方通行の報道ではなく、読者などとのディベートを盛り込むこと
3)社会や社の意向に逆らっても真実を伝えることができる記者を育てること
である。加えて、本書も指摘しているように「サイバー空間では平時と有事の差はない」ことは、すべての国民(視聴者)も認識すべきですよね。