先日APEC/ABACの報告会に出席して、久し振りに東南アジアのことを考えるようになった。そこで20年ほど前に読んで、よくわからなかったこの本を、再読することにした。2000年に、京都大学東南アジア研究センター白石隆教授が著わしたもの。19世紀以降の東南アジア地域で何が起きていたのかを挙げて、ちょっと長めのスパンで趨勢を研究するもの。
冒頭、英国人でシンガポールを建設した中心人物ラッフルズの考えを紹介している。彼の名前はシンガポールを中心にホテルチェーンや、広場などに残されている。1800年代初め、マラッカにやってきた彼は小さな漁村だったシンガポールに、通商都市を建設することを思い立つ。
それまでの東南アジアはオランダの支配が強かった(フィリピンだけはスペイン支配)が、ナポレオン戦争でオランダがフランスに占領され、結局英国がナポレオンを倒したことで、この地域に英国が勇躍して進出していた。ラッフルズは英国がこのエリアを支配するにあたり、3つの人種に警戒すべきと言っている。
・中国人 よく働くのはいいが、儲けても全てを中国に持ち帰る。
・アラブ人 働きもしないで支配だけしたがる。地元の発展に貢献はしない。
・アメリカ人 とにかく商売優先、加えて銃器(武器)を売り社会を不安定化させる。
これは200年経っても変わらない真実に見える。そこでラッフルズは、「海の民」であるブギス人と英国との同盟を推奨している。セレベス島の住民である彼らは、大小の島が点在しているこのエリアで通商路を確保する助けになるというのだ。このエリアでの通商路は、かつては中国への「朝貢貿易システム」しかなく、これが海賊の跋扈で衰退していた。
しばらく英国がこのエリアを治めた後、民族自決などの運動や日本帝国軍の進出があって、第二次世界大戦後多くの国家が建設された。しかしアメリカ主導の「上からの国家建設」が上手くいった国は少ない。そもそも国家としての意識のない孤立した民族が点在しているのがこのエリア。
2000年の時点で筆者は、日米による軍事支配+経済支援のスキームでは未来は暗いという。経済ネットワークの多くは「旧華僑」による支配力が強い。ただこの時点で中国の近代大国化とその支配の公算は低いとある。
僕としては、ASEANが警戒すべき3人種というのは、とても納得できる話でした。