第一次世界大戦に敗れ、海軍の艦船保有に制限を設けられることになったワイマール共和国だが、シェットランド沖海戦に臨んだような大艦隊を夢見る人は多かった。当時世界最大の海軍だった大英帝国の主力艦隊を正々堂々迎え撃ち、ほぼ引き分けの結果を得たこともある。
もちろん第二次世界大戦の前に、その夢をかなえることなど到底不可能だった。それでも技術的な優位を持つドイツ軍は、何隻かの大型戦闘艦をロールアウトする。本書はナチス時代に竣工し第二次世界大戦を戦った7隻の戦闘艦の記録である。型式としては、次の3通りである。
★装甲鑑(ポケット戦艦)
・兵装 26センチ砲×6、魚雷発射管×6
・基準排水量 約12,000トン
・速力 最大28ノット
・同型艦 ドイッチェランド、シェーア、グラーフシュペー
戦艦と言うよりは通商破壊艦としての巡洋艦と思ってもらっていい。帝国海軍の巡洋艦(主砲:20センチ砲×8~10、基準排水量:10,000トン前後、速力:35ノット)と能力的には大差なく、速力などは劣っている。
★巡洋戦艦
・兵装 28センチ砲×9、15センチ副砲×12など
・基準排水量 約32,000トン
・速力 最大32ノット
日米英含めて、第二次世界大戦に参戦した「戦艦」の中で、僕はこれほど美しい戦闘艦を他に知らない。横山信義の作品の中には、このクラスが「帝国海軍巡洋戦艦浅間級」として活躍するシリーズもある。まだ航空戦力が未熟な大戦初期のことだが、この2鑑は英国空母「グローリアス」を砲撃で撃沈している。
★戦艦
・兵装 38センチ砲×8、15センチ副砲×12
・基準排水量 約42,000トン
・速力 31ノット
本格的な戦艦といえばこの2隻だろう。主砲の口径は小さいが、長砲身なので短砲身の40センチ砲(長門・陸奥クラス)に匹敵したともいう。現に、「ビスマルク」は英国のベテラン巡洋戦艦「フッド」を一撃のもとに轟沈させている。
ドイツ艦艇はその驚異的な防御力で活躍するのだが、最後は量に勝る英米海軍に敗れた。そもそも陸棲国家であるドイツが、海洋支配ができる海上戦力を育成できたかどうかは、資源の制限とは別に疑問がある。それでも、もう一度言いますが「シャルンホルスト級は美しい」わけです。