新城彰の本棚

ミステリー好きの自分勝手なコメント

19世紀の遺物がいまだに残り

 僕のビジネスは「Global & Digital」の追及なのだが、多くの法規がアナログ時代のまま放置され、その克服に苦しんできた。書面や印鑑を必須としたり、直接面談を求める法律の改訂はそれなりに進んでいるが、実は大きな壁となっているもののひとつが「著作権法」。何度かトライアルをして表層部分の議論で跳ね返され、本質にたどり着けていない。本書は2010年に出版され、その奥深さを知って「しばらく触らないようにしよう」と考えさせられた書である。

 

 著者の野口祐子弁護士は、知的財産法・国際取引などの専門家。19世紀に成立した著作権関連規定の歴史から、新技術の導入・デジタル化の進展で変わりつつあるデータ活用環境下なのに、関連規定が対応できていない現状を記したもの。本書にもあるように「デジタル時代の著作権問題は非常に難しい」のだが、それを分かりやすく(といっても素人には難しい)解説してくれている。

 

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 著作権の基本は19世紀に成立したベルヌ条約に基づいているが、この改訂には160ヵ国以上の加盟国すべての合意が必要で、事実上(日本の憲法改正よりも)不可能。そこで、フェアユースクリエイティブコモンズなどの仕組みを作って、コンテンツ流通の自由度を確保しようとしている。いくつか勉強になった点を挙げると、

 

著作権は事実やアイデアには適用されない。あくまで表現の仕方に関する権利

・個人が大量にコピーできたり、ネット上で配信できる状況は考慮されていない

・コピーするツールを提供するだけでも、著作権法違反に問われることがある

・データベースも工夫のある整理の仕方をすれば、著作物と認められる

・米国はハリウッドの強力なロビー力で、映画等の著作権保護には熱心

・一方データ共有による経済発展も理解していて、映画等以外の流通には配慮

・技術的保護手段(DRM)は有用だが、著作権法とはズレもある

著作権著作権者の死後50~70年で消滅する

 

 本書の出版から12年経って、状況はより複雑化しているように思う。例えばAIが作ったデータベースやコンテンツの著作権はどうなるのか?AIは(通常の意味では)死なないから、著作権は永久に残るのか?

 

 「DATA Driven Economy」推進のための表面上の理解はできたので、是非著者には教えを請いたいです。