新城彰の本棚

ミステリー好きの自分勝手なコメント

「○○風」は信じないように

 本書は先月「地名の世界地図」を紹介した21世紀研究会の、世界地図シリーズの1冊。テーマは「食」で、食材の原産地から世界への普及ルート・料理が生まれた経緯や国籍・食べ物の起源や語源・美食家たちに関わる料理・食を巡ることわざなどが紹介されている。「地名の・・・」と違って、抗争の歴史をたどる生々しさはない。その分、人類がいかに食べ物・食べ方に固執したかが、一部レシピも含めて詳述されている。

 

 一番印象に残ったのは、「○○風・・・」というもののいいかげんさ。先日当家でも「リガトーニアメリケーヌソース掛け」を家内が作ってくれたのだが、僕が「これってアメリカ料理?」と聞くと、家内は「違うけどエビをダシに使うと、アメリケーヌっていうの」と答えた。ちなみに本物のアメリケーヌソースはロブスターで作るのだが、当家にそんなおカネはないので普通のバナメイエビ

 

 本書によれば「アメリカ風海老料理」を最初に出したのは、アメリカ帰りではあるがフランス人シェフのパリのお店。ロブスターをブツ切りにしてダシをとる簡便な料理で、その簡便さが新大陸アメリカらしいと名付けられたという。ちなみに「アメリカ風ステーキ」はタルタルステーキのことで、火も通さず料理らしくないからアメリカっぽいのだそうだ。

 

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 「○○風」が大量に世に出たのは、1800年代のパリのレストランの競争が原因らしい。それまで「リ・ド・ヴォの串焼き」などと書いていたものを、「トゥヌッド・ロッシーニ」や「若鶏のマレンゴ風」などと思わせぶりにメニューに載せるようになったとある。ロッシーニは確かに美食家で料理の工夫にもたけていたようだが、そのレシピをこのレストランが継いでいたかは不明だ。

 

 フランスで「日本風」というのは、シソ科の多年草チョロギを添えたものと言う意味だ。僕は日本人だが、そんなものを食べた記憶はない。「マケドニア風」というのは、欧州各地のごちゃまぜ料理を指すともある。「○○風」を信用できないゆえんだ。

 

 役に立ったのは巻末の「世界の料理小辞典」、また本文中のチーズやパスタ、腸詰の区分、地図上での分布は興味深かった。X'masプディングの国際比較も・・・。このシリーズ、なかなか勉強になります。もっと探してみましょう。