新城彰の本棚

ミステリー好きの自分勝手なコメント

東トルクメニスタンで起きていること

 昨日「中国人のお金の使い道」で、この10年間の中国の都市部・沿海部の繁栄ぶりを紹介した。その辺りにはまだ微笑ましい部分もあるのだが、内陸に目を転じると許しがたい状況も見えてくる。以前からチベットの弾圧やモンゴルへの圧力は知られていて、最近新疆ウイグル自治区での中国政府の所業が明らかになりつつある。

 

 本書は在日で新疆ウイグル弾圧を知る3人が、中国政府を告発しその所業を黙認している人たちに訴えかけたもの。黙しているなら全ての日本人も。中国政府の加担者であるといいたげだ。対談形式で進む本書は、

 

・日本ウイグル協会 于田ケリム会長

・同 ハリマト・ローズ副会長

静岡大学 楊海英教授(モンゴル生まれ)

 

 が、そこで起きていることを赤裸々に語っている。曰く、

 

ウイグル語の文献を焚書

強制収容所で洗脳教育

・女性には不妊措置

スマホGPS、カメラ等で監視

 

 という具合。「生活建設兵団」という屯田兵のような軍隊が進駐してきて、漢民族が要衝を占領してしまった。ウイグル族は歴史もアイデンティティも奪われ、生存権すら危うくなっている。まさにジェノサイドが起きていると筆者たちはいう。

 

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 かつては「東トルクメニスタン共和国」または「東トルクメニスタンイスラム共和国」と言われていたこともある地域。第二次世界大戦後、この地域をスターリン毛沢東に売り渡したことによって、中国共産党の支配を受けることになった。

 

 タクラマカン砂漠などもあり決して豊かではない土地のため、中国政府は核実験場などとして使っていた。広島型原爆1,000発以上が、そこでさく裂したとある。しかし「一帯一路」構想が出ると、この地はロシアやパキスタン、トルコ経由欧州へ抜ける重要地域になった。そこでウイグル族を根絶して、漢民族の地にしようとしたらしい。

 

 イスラムの教義を否定し、豚肉を食べさせたり、スカートを短く切ったりするいやがらせをしている。不妊手術も人口減少という目的と共に、出産制限を禁じているイスラム教義を冒涜するためでもある。不思議に思ったのは、周りの「・・・スタン国」が良く黙っているなということ。筆者らは「厳重な警戒で、イスラムの行動派がやってきてもすぐに弾圧される」という。監視は徹底しているようだ。

 

 多少の誇張はあっても、本書は真実に近いことを告発しているのでしょう。国際社会はどうするのでしょうか?