新城彰の本棚

ミステリー好きの自分勝手なコメント

有閑マダム達のスコットランド旅行

 1962年発表の本書は、「名探偵トビー&ジョージ」シリーズでおなじみのエリザベス・フェラーズの中期の作品。レギュラー探偵は登場せず、アフリカ帰りの34歳の土木技師ロビンが探偵役を務める。ロビンは海外で長く働いてきたが、久し振りにロンドンに戻り新しい職に就く。その間に、スコットランドマン島で休暇を過ごすことにした。

 

 ロビンはロンドンの空港で、有閑マダムのアマンダを見かける。偶然飛行機の席で隣り合ったアマンダは、ロビンを相手に夫の事や旅行のことを話し続ける。グラスゴーの空港ではやはり40~50歳ほどのマダム(ヘレン&キャロライン)と合流、また偶然にも3人はロビンと同じマン島への列車に乗る。

 

 島についたロビンはホテルの迎えの車に同乗した、シャーロットという美しい娘と知り合う。一方3人の有閑マダムには、近くから車でやってきた50歳代の婦人デアドリーと合流して、ロビンらのホテルに落ち着く。ロビンら2人は、4人の有閑マダムに引っ張り込まれ、一緒にお茶や食事をする羽目に。

 

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 デアドリーだけは本当に未亡人、3人の前夫がいたが本人によると「生かしておけなくて」現在は独り身である。アマンダの夫は有名なライター、先ごろ作品が映画化されて多くの印税が入った。キャロラインの夫は「Fich & Chips」外食チェーンのオーナーでこちらも裕福。ヘレンは最近再再婚したばかりだが、もともとお金持ちで息子はマン島で開業する医師だ。

 

 彼女たちの3人の夫は、仕事・釣り・山登り・ゴルフにうつつを抜かし、妻を顧みないので<未亡人>のようなものだと、彼女たちは言う。「いい気なものだ」と思いつつもロビンたちは4人の<未亡人>の小旅行に付き合ったりしていたのだが、ヘレンから酔い止め薬を貰って呑んだキャロラインが死に、ロビンは事件に巻き込まれる。事件は、有閑マダム達の色恋や遺産狙いと思われる親族もからんで、複雑な様相を見せるのだが。

 

 事件の解決も鮮やかなのだが、それよりもマン島はじめスコットランドの自然が美しい。ゲール語が起源のスコットランド言葉は、どこかドイツ語の風情がある。現地の人は実直で、ホテルマンも警官もまっすぐな人たちだ。

 

 凡百の観光案内より面白いスコットランド紀行でしたね。作者中期の傑作と言われる理由もわかりました。