新城彰の本棚

ミステリー好きの自分勝手なコメント

防衛費GDP比2%を目指すなら

 本書は、外務省で駐タイ大使などを務めた岡崎久彦氏が、2003~2005年にかけて新聞や月刊誌に発表した論考から収録したもの。筆者は外務省を退官してから、岡崎研究所で所長を務め、第二次安倍政権での外交・安全保障ブレーンだった。

 

 これらの論考が書かれた時期は小泉内閣、対中韓では靖国問題、対北朝鮮では核問題と拉致問題、日米同盟ではイラク戦争などとの関わりが国内外で議論になっていた。題名に靖国問題とあるが、主な内容は21世紀の日本の安全保障に関するものだ。

 

 筆者は常々「日本はアングロサクソンと緊密な関係の時には栄える」との論陣を張っていて、一部メディアからは「米国の犬」呼ばわりもされていた。ただ今にして思えば、筆者の主張は全く理にかなったものだ。主張のポイントは、

 

1)日米同盟を確固たるものにし、日本の安全を図るため、集団的自衛権を容認

2)充分な戦力を保持するため、GDP比1%の縛りを撤廃

3)国の基幹は教育(教育の充実や軍事力向上のため)消費税率を引き上げ

 

        

 

 である。靖国問題などは、国内の一部勢力が騒ぎ立て外国を巻き込んだ「内政問題」だとして、毅然とした態度をとればいいとしている。そもそも三木総理が参拝後「私人として参拝」と言ってしまって、公式か非公式か、A級戦犯合祀の是非などが問題になったが、中韓にとやかく言われる筋合いはないということ。

 

 当時からくすぶっていた台湾問題については、中国の選択肢として、

 

上策:独立を認め、中台同盟を結ぶ

中策:台湾の国連加盟を後押し

下策:現状維持

 

 の三策を提案したとある。ちなみに武力侵攻は「下の下策」とのこと。

 

 日本の防衛力に関しては、予算増が必要で、以下のものを早急に整えることとある。

 

ミサイル防衛システムの開発

・情報収集、分析能力の向上

・継戦能力向上のための弾薬備蓄増

・正面装備だけでなく、整備費・訓練費を増額

・人員は最低でも維持

 

 要するに自衛隊は正面装備だけはまずまずだが、実際には戦えない(戦い続けられない)軍隊だと指摘しているわけだ。筆者がブレーンを務めた安倍内閣では、集団的自衛権行使が可能になった。次は情報戦を含めた実質戦力の向上が重要、幸いGDP比1%の縛りは解けたので、政府には岡崎先生のアドバイスに従った予算積み上げ、配分をお願いしたいと思います。