新城彰の本棚

ミステリー好きの自分勝手なコメント

「大阪維新」の10余年

 日本政界の今年最大のイベント(!)参議院議員選挙が、明日いよいよ公示される。一時期民主党が政権を担ったことはあるが、55年体制以降は実質的に自由民主党政権が継続している。現時点では政権交代を狙える野党はいないのだが、その第一の候補は「日本維新の会」だと僕は思う。その理由は、バラマキのポピュリズムに堕すことなく、しっかりとした政治理念をもっていることと、大阪という都市でだが与党として10余年の実績があり行政経験・成功体験を持っているからだ。

 

 本書は3人の著書となっているが、恐らくは大阪府市特別顧問でもある上山信一慶應教授が中心になってまとめたもの。2020年11月に予定されていた二度目の大阪都構想住民投票前(9月)に出版されたのは、投票を意識して「大阪維新の会」の実績をアピールする狙いがあったのだろう。

 

 僕らは「二重行政」という問題点しか知らないが、実際21世紀初頭の大阪はひどい状況だったようだ。1994年に県民一人当たりの所得で愛知県に抜かれてから、差は広がるばかり。TOPの東京都の後ろ姿は全く見えず、全国平均と同等まで落ち込んでいた。

 

        

 

 最大の原因は「大阪市役所一家」という特権階級が、府・市の行政を歪めていたから。公務員組合・議会議員・行政幹部らが結託をして、放漫経営を続けていた。各部署がウラ金を作り、勝手に人を雇うものだから、ちゃんとした会計はもちろん人員把握すらできないありさま。まるで発展途上国の行政のようだ。

 

 その結果、府・市の財政は悪化、企業の不振や逃避が始まり、個人の貧困に繋がっていた。これらを断ち切るため「維新の改革」を断行した結果、商業地価は2倍、外国人旅行者は7倍、ホテルの空室率は全国最低、ひったくり犯罪は93%も減った。生活保護受給者であふれていた「あいりん地区」は綺麗になり、受給者も減った。市営地下鉄は整備され、運行間隔が短くなった一方、運賃を下げることもできた。身を切る改革で議員定数も議員報酬も減っているが、子供&教育予算は5倍に増えた。

 

 面白いのは時代感覚、19世紀は帝国の時代、20世紀は国家戦略の時代、21世紀は大都市の時代。日本全体でやるべきことは少なく、道州制でもまだ単位が大きい。都市を中心に戦略を立てる時代ということだ。面白い意見だし、興味は持ちますが、どうして都構想住民投票に再度敗れたのでしょうかね?