新城彰の本棚

ミステリー好きの自分勝手なコメント

エトルリアの里でワインを飲み歩く

 折角「With COVID-19」の雰囲気が北半球には広がってきたのに、ロシア・ウクライナ紛争で海外旅行のハードルがまた増えた。そろそろ欧州へ行きたいな、イタリアやスペインが・・・と思って<HIS>のサイトを見ると、航空料金が以前の1.5~2倍になっているように感じる。仕方がないので、本棚から本書を引っ張り出してきて再読した。最初に2人で行った海外旅行先はフィレンツェ、家内はこの本でトスカーナとそのワインが大好きになったと言っていたっけ。

 

 2002年出版された本書は、トスカーナ州のアグリツーリズモ(長期滞在用の宿泊施設)をめぐる紀行本。著者の千厩ともゑさんは、フリーの編集者兼ライター。学生時代から(バブルに踊る同級生らを尻目に)自然豊かで人情に篤いトスカーナに通い詰めた人。きっかけは州の西部にある田舎町スヴェレートにある日本人男性とイタリア人女性の夫婦が営む<ブリケッラ農園>でアグリツーリズモを体験したこと。

 

 見渡す限りのブドウ&オリーブ畑に差す朝日で目覚め、簡素だけれど美味しい料理を食べ、現地のワインを(片端から)呑む。そんな暮らしを経験してしまうと、ブランド品を買い漁る海外旅行など、考えもしなくなったという。

 

        

 

 本書の冒頭、トスカーナ州の地図がある。フィレンツェシエナが有名だが、なんとエルバ島も州の一部なのだそうだ。ローマ時代の前に、この地(ローマ以北)はエトルリア人が住んでいた。ナポリ以南はギリシア人の勢力圏で、地中海はフェニキア人を含めた3民族が分け合っていた。後にフィレンツェメディチ家で栄えるのだが、それ以外にもモンテプルチアーノは歴代法王が後ろ盾になって隆盛となっているし、アレッツォは近年フェラガモ一族が買い取って中世の街を再現したという。

 

 筆者が巡る先には、DOCG/DOCワインが次々に現れるのだが、それ以上に目立つのがドイツ人観光客。家族単位だけではなく集団で訪れ、食べまくり呑みまくって去っていく。彼らにとっては「憧れのトスカーナ」であり、エルバ島は日本人にとってのハワイのようなものらしい。

 

 スーパー・トスカーナを始めとする銘酒とそれに合わせる料理の数々、とても参考になりました。でも、読むだけじゃなく、実際に行きたくなってしまいましたよ。