新城彰の本棚

ミステリー好きの自分勝手なコメント

「COVID-19」禍半年で見られた変化

 2020年7月発表の本書は、主として月刊「Voice」に掲載された15の論考(書き下ろしであったり、インタビューをまとめた)を束ねたもの。全体として何かの主張に結び着けようというものではなく、多様な分野の学者、評論家、作家、コンサルタントなどが「COVID-19」禍半年で、世界の変化について何を感じたかが書かれている。

 

 ここに登場する多くの論客は、「COVID-19」との闘いは長引き「With COVID」にならざるを得ないと予測している。以前からあった社会問題を顕著にしたという点でも一致しているが、専門によって「どんな問題」かは指摘が分かれる。僕が感じたのは、

 

◆都市化

 経済合理性を求めてヒト・モノ・カネ・情報が集まる都市は、規模が大きいほど有利だった。三密の場での情報交換がイノベーションにも陰謀にも結び付いたのだが、今後はそれが難しくなる。「開」で「疎」な空間に種々の活動が移っていくと思われる。

 

グローバリズム

 世界で一番安いところで買って、高いところで売るモデルは、国際社会全体では格差を縮小したが、各国内では格差を広げた。特に先進国の中間層は軒並み没落、富の偏在が顕著になった。この傾向にも「COVID-19」は竿を指し、経済界の都合ではなく国家主権が再び台頭している。

 

        

 

◆デジタリゼーション

 「COVID-19」がかつてのパンデミックと異なるのは、グローバル化だけでなくデジタリゼーションも同時に進展している時代に起きたこと。パンデミックがより大規模に問題(貧困・偏在・格差等)を孕んでいたところを直撃し、未曽有の混乱を招いた。しかしこれを留め建てする方法はない。

 

◆米中対立

 中国市民は、苦労はしたがパンデミックを抑えた中国政府に比べ、欧米各国政府の無為無策にあきれた。かつて憧れだった国々の体たらくに、自らを誇り相手を侮るようになっている。一方米国では「China Virus」の掛け声で、パンデミックは中国のせいとの声が高まり、市民レベルでも両国の分断が深まった。

 

◆日本の統治機構

 「自粛」で片付けようとしているが、市民はそれを政府の要請ではなくその背後にいる何か(道徳?)の指示と受け取っている。このような統治機構に、各国は疑問を投げかけている。

 

 やはり「COVID-19」は、世界の問題点をあぶりだす契機ではあったようですね。