新城彰の本棚

ミステリー好きの自分勝手なコメント

ネット規制強化論の背景

 先週、JCLUセミナーの書籍化で、米国他の政府が市民監視にインターネットを役立てているかを紹介した。本書は、逆に政治家(特に選挙)に対してインターネット経由でどのような影響が与えられるかを論じたもの。2018年の発表で、著者の福田直子氏は「大真面目に休む国ドイツ」などの著作があり、30年に渡ってドイツ・米国で暮らした人だ。

 

 事例として挙げられているのは、米国の大統領選挙でトランプ勝利の件と、Brexit国民投票の件。いずれも「偽ニュース」が飛び交ったのだが、ネットメディアがこれほど国の方針に影響を与えるようになっていることを示している。多くの市民が自分の見たいものだけを見るように誘導されているのだ。

 

・新聞、TV、ラジオなど既存メディアは衰退

・ネットメディアは拡散力が強いが、信頼性に欠ける

 

 ので、特に接戦が予想される選挙の場合、ほんの少数のカギを握る層に絞った攻撃が大きな意味を持つ。

 

        

 

 層を形成する人の情報も何らかの形で手に入り、AI等でプロファイリングも容易。個々人に絞った(偽)ニュースを流して、投票意思を支配できる。個人データの分析により、その人の、

 

・Openness(開放性)

・Conscientiousness(誠実性)

・Extroversion(外向性)

・Agreeableness(協調性)

・Neuroticsism(情緒安定性)

 

 を測ることができる。これは心理学のOCEANモデルといわれるもので、その人物に有効なマイクロ広告を設定できる。

 

 本来ソーシャルメディアは「人と人をつなげ、相互理解を深め、世界を広める」ものだったはず。しかし現状は世界にも、国内にも分断と「フィルターバブル」に閉じこもった人間たちを作ってしまった。これを是正するには、巨大ITに「偽ニュース削除の義務付け」では不十分だと筆者は言う。これが欧州などで広まる、巨大IT叩きの背景かもしれない。

 

 インターネットとソーシャルメディアの活用以前に、個々人のメディアリテラシー教育が必要だといいます。それは分かるのですが、さて、どうしますかね?