新城彰の本棚

ミステリー好きの自分勝手なコメント

中性子弾対EMP弾

 昨年大石英司の「サイレントコア」シリーズの1編「魚釣島奪還作戦」を紹介したが、作者がもうひとつシリーズ化していたのが「UNICOON」もの。国連が軍事的即応部隊を極秘に持っていたという設定(その資金は日独が提供)で、1990年代に多く発表されている。1996年に発表されたものを2017年に加筆したのが本書だが、時代背景などは1990年代のままだ。

 

 「UNICOON」は、陸海空の新戦力を持ち、ステルス双胴艦「シーデビル:通称ゆきかぜ」や超高高度侵略機などの新兵器やSHADWという陸戦部隊もある。「シーデビル」には、オスプレイハリアーコマンチなども搭載可能だ。国連軍だから米国人・ロシア人・ドイツ人などの軍人も加わっているが、「シーデビル」の片瀬艦長やSHADWの中心人物斗南無など日本人が多いのがご愛敬。

 

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 今回の舞台は黒海からジョージアにかけての地帯、ロシア軍がジョージアに侵攻し主な都市は制圧したものの、チェチェン人のゲリラに悩まされている。ゲリラを支援するロシア関係者も多く、ゲリラ側は米国の核物理学者の協力を得て中性子砲弾「バレット」を生産できるようになる。さらに7万トン級の巨大海中要塞「シーフォートレス」も手に入れた。これは旧ソ連が建設中に廃棄したはずの艦体を完成・配備させたもの。

 

 「シーフォートレス」は黒海からゲリラを支援しようとし、ロシア艦隊もこれを追っている。「シーデビル」はロシア艦の目を逃れながら、海中要塞を追尾する。一方ジョージアではゲリラを追っていたロシア軍に中性子弾が降り、兵士は全滅。装備はそのままゲリラのものになってしまう。

 

 「UNICOON」では中性子弾を無力化しようと、EMP弾の使用が計画される。いずれも大量破壊をしない「使える核兵器」で、半導体を破壊できる電磁パルスで中性子弾ではなくその制御機構を破壊しようというものだ。作中、

 

・M-1エイブラムズはEMP弾を食らえば、エンジンすらかからない。

・T-80は、照準器などは使えなくとも移動でき主砲も撃てる。

 

 遅れている方が、電磁パルス下の戦場では役に立つとの発言もある。ハイライトは黒海でのロシア艦隊・海中要塞・「シーデビル」の海戦。横山信義作品に比べるとあっさり決着してしまいますが、それは現代海戦であることを考えると仕方ないのかもしれません。