昨日「防衛事務次官冷や汗日記」を紹介した。37年間防衛庁(後に省)の内局に努め、各幕(現場)と官邸・政治家や財務省などと「板挟み」になってきた黒木氏の経験談は、それなりの重みがあった。どの先進国にも、軍の暴走を防ぐ<シビリアンコントロール>はあるのだが、戦後日本のそれはかなり行き過ぎていて、実際戦える自衛隊なのかを疑問に思った。
そこで本棚から引っ張り出してきたのが本書、東京新聞社会部がまとめた「防衛費利権」の話だ。東京新聞社会部は、2018年10月から「税を追う」という連載を始めていて、国土交通省・厚生労働省などと業界団体、族議員の癒着問題を取り上げてきた。その中に防衛省からみのものもあって、その部分を2019年に書籍化したのが本書である。
主な主張ポイントは、
・GDP1%枠の防衛費だが、その多くは米国からの装備品購入に充てられる
・ステルス戦闘機やイージス・システム、レーダー等に多額の予算が割り振られる
・当該年度に払いきれず「兵器ローン」を組むケースも増えた
・その一方、国内防衛産業には「支払い猶予」を求めるなどカネに詰まっている
・それゆえ自衛隊員の処遇や生活環境には、カネが回らない
・部品や弾薬なども不足し、継戦能力に問題がある
ということ。辺野古の埋め立て工事にしても、どんどん費用が膨らんで無謀なことが分かっているのに、民意がNoと再三言うのに止められない。
「税を追う」のバックボーンがあるからだが、防衛産業との癒着なども取り上げられているが、ではどうすればいいかは本書にはない。防衛費の使い方は間違っているという主張だけだ。
新聞社としては、その理由を「政界・官界・産業界の癒着」と決めつけているのだが「自衛隊が闘わなくてもいい軍隊ゆえ、米国にカネを払えばいいだろう」との考えに至っていない。さて、GDP2%枠の議論も出てきました。本当にどうすればいいのでしょうか?