新城彰の本棚

ミステリー好きの自分勝手なコメント

マクロに捉えた47都道府県の産業力

 2018年発表の本書は、帝国データバンクと読売新聞の中村記者による、「COVID-19」禍前の日本の産業界(景気)地図。最近デジタル政策もサイバーセキュリティ対策も東京視点だけでは不十分だと痛感させられているので、何かの参考になればと買ってきた。「ご当地企業」と題名にあるが、勉強になったのは個々の企業の事ではなく、地方のマクロな産業力指標。ここでは10の指標で47都道府県の企業群を評価している。

 

1)社長の若さ

2)事業継承確率(後継者の見つけやすさ)

3)経営人財の流動性(社長の出身地が他県か)

4)従業員還元度(労働分配率の高さ)

5)企業の若さ(創業年数)

6)県内の企業格差(企業のジニ係数

7)増収企業の割合(売上高が伸びた企業の比率)

8)経営効率性(労働生産性の高さ)

9)自給自足率(県内仕入れ割合の高さ)

10)県外への営業力(県外売上割合の高さ)

 

 まず地方の人が言う「特殊エリア東京都」だが、経営効率性と経営人財の流動性が非常に高い。また企業格差も非常に高い一方、従業員還元率は低い。明確に優勝劣敗の地域であり、(企業も個人も)格差が大きい。

 

        

 

 次に、ある意味特殊な「沖縄県」。企業の若さ、社長の若さ、自給自足率が非常に高い。経営人財の流動性、経営効率性、企業格差が低い。事業継承確率は非常に低く、県内の若い人が起業するのだが、経営効率等が上がらず倒れている実態が見えてくる。北の大国「北海道」では、自給自足率が非常に高く、道外への営業力が非常に低い。経営効率や増収企業の割合は悲観するほどではないが、やはり独立経済圏の傾向が見られる。

 

 大都市(特に東京)近郊の県では、どうしても県外への営業力が高くなる。自給自足性は低くなるが、その他の経営指標は悪くない。大都市の恩恵にあずかっていると言えるだろう。また大都市から離れた県では、企業格差が低く抑えられていて「貧しいけれど平等」と思われる。

 

 面白かったのは「地味な滋賀県」、近江商人の系譜なのか自給自足率が極端に低い。一方社長の若さと事業継承確率がどちらも高い、ダイナミックな産業形態に見える。仙台・名古屋・京都・広島・福岡など地方中核都市のある県では、レーダーチャートは円形に近い。

 

 これからも地方行脚をすることが増えそうですから、本書は行く先の県民性を予習するために保存しておきますよ。