新城彰の本棚

ミステリー好きの自分勝手なコメント

20世紀の4大兵器革命

 本書は先月「戦争学」を紹介した、松村劭元陸将補の前著の続編。古代から2,600年間におよぶ戦史を紹介した前著と違い、世紀末の2000年に発表された20世紀の「戦闘教義」を網羅した書である。

 

 総力戦下の国家の国力8要素と、戦いの9原則が前著で紹介されていたが、本書ではさらに3種の「力」が分類されている。

 

◆戦力の6要素

 火力・機動力・指揮通信力・情報警戒力・防護力・人事兵站力。戦場に置いて指揮官が麾下の戦力をうまく運用して敵の意図をくじき、自らの目的を達成するにはこの6要素が適切に機能してくれなくてはならない。

 

◆戦闘の5機能

 発見・拘束・制圧/擾乱・機動・打撃/占領。戦力をどのように運用するかがカギで、これらのすべてを適切に組み合わせて利用しないと勝敗の決着を見ない。例えば機動は重要だが、それだけで敵戦力を始末するのは不可能だ。

 

◆勝利のための4要素

 優れた戦闘教義・戦力の質と量・指揮組織の戦術能力・指揮官の決断力と統率力。戦闘教義(得意技)は前著でも取り上げられているが、戦闘教義が戦術を産み、戦術が戦略を産むと筆者は言う。指揮官については、決断力・統率力は天与のもので教育は難しいとある。

 

        f:id:nicky-akira:20211128143526j:plain

 

 人材の使い方についても面白い区分が示されていて、

 

・頭が良く真面目 ⇒ 参謀にする

・頭が良く横着 ⇒ 指揮官にする

・頭が悪く横着 ⇒ 使い道はある(鉄砲玉みたいな用途?)

・頭が悪く真面目 ⇒ 存在自体が悪、ただちにクビにすべし

 

 などは、軍隊以外の組織でも役立つ金言である。テクノロジー面では、20世紀には4つの兵器革命があって、戦力や戦闘教義に多大の変革をもたらしたという。

 

1)第一次世界大戦では「火薬」が最大限に威力を発揮するようになった。

2)第二次世界大戦では「内燃機関」を使った戦車・航空機などが戦場を支配した。

3)冷戦期「原子力」によって軍事力行使の目的や戦域が制限されるようになった。

4)世紀末「情報・通信力」によって、新しい戦闘ドクトリンが模索されている。

 

 20世紀の戦争は充分知っていたつもりだったが、中東戦争(アラブ対イスラエルの6日戦争や10月戦争)についての詳しい紹介は目新しいものでした。イスラエルの戦闘教義は、英米すら学びに来たという。松村先生の「戦争学」2冊目、勉強になりました。