新城彰の本棚

ミステリー好きの自分勝手なコメント

嵐の夜の東京壊滅作戦

 先月、日本の自衛隊の問題点について、どうすればいいのかの提言をまとめた「令和の国防」まで3冊の書を紹介した。

 

闘えるようにするには - 新城彰の本棚 (hateblo.jp)

 

 2014年発表の本書は、小説の形を借りて「闘えない自衛隊」の問題点と、その解決策を示したものである。作者の安生正は、デビュー作「生存者ゼロ」で「このミス大賞」を獲得、前作を上回る問題作として本書を書いた。

 

 北朝鮮の1個中隊(200名)が、中国貨物船団にまぎれて日本に上陸、土台人(在日スパイ)の協力で、台風が迫る東京で大規模テロを敢行する。指揮官ハン大佐は「作戦級の英雄」だが、妻子を人質に取られてやむなく作戦を引き受けた。北朝鮮政府を動かした中国の崔将軍は、お目付け役に部下の陳中佐を同行させている。東京壊滅作戦の成否を危ぶむ者たちに、ハン大佐は日本の国防システムには欠点があると指摘する。それは、

 

        

 

国家安全保障会議の意思決定システムが未熟で、緊急の有事に対応できない

日米安保条約の存在が、逆に有事への対応を遅らせる

 

 の2つ。チェコ製の機関銃や各種のミサイルで完全武装したハン大佐の部下たちは、警察のSATらを簡単に蹴散らし、自衛隊の特殊作戦群もワナにかける。国家安全保障会議に呼び出された防衛省情報本部きっての分析官真下三佐の献策は、政治家や官僚の抵抗にあって採用されない。特に法学部出身財務省から防衛省に出向している審議官は、数々の法律を並べ立てて実働部隊を動かさせない。

 

 水際作戦しか想定していない自衛隊は、首都での市街戦など全く準備していない。米軍も「もし市民を傷つけては一大事」と応援を求めないことに決めてしまう。警官100名、自衛官200名が犠牲になっても、安全保障会議は迷走するだけ。

 

 なぜ闘えないのか、予習をしておいたので理解できました。さて、現実社会では本書のように「結果オーライ」になりますかね?