昨日、福島原発事故の「時の総理」菅直人氏の著書で「最悪の事態を考える」ヒントをもらったことを紹介した。同じく2012年発表の本書は、「逆説の日本史」で言霊論を展開している作家井沢元彦氏の視点で見た原発事故の背景。とはいえ、その件は全体の1/3、残りは平安・鎌倉時代以降の日本史における言霊信仰の話と、仇敵である朝日新聞批判だ。原発事故に関する指摘事項としては、
・津波が来たらこういう事態になると予想はしていたが、来ないとしていた。
・原発事故対応ロボットは、30億円かけて開発したが、廃棄された。
・原発立地自治体の長が「事故は起きないから避難訓練は不要」と発言していた。
・長時間の全電源喪失は起こらないことが前提だった。
というもの。これらのことは、全て「事故が起きるぞと言えば、本当に起きてしまう」との言霊信仰によるものだというのが筆者の主張。
かねてから筆者は、
・平安京に遷都したから平和になる。だから軍事力は不要とされた
・例え国力が10倍の米国でも、神国日本軍は負けないと開戦した
のも言霊のなせる業と、日本史の例を挙げ、朝日新聞についても、原発導入にさんざん難癖をつけた上に、原発を改良したら「やはり不良品だ」と糾弾し、関係者により隠ぺい性向を持たせたと非難する。
確かに筆者や僕が学生時代には、
・受験生に「滑る」と言ってはいけない
・結婚式に「切れる」「別れる」は禁句
などの口伝はあった。しかし今のSNS上で、そんな忖度があるとは思えない。言霊に支配された国民だから「原発事故は不可避」との説には、賛成はできない。ただその傾向も残っているから、我々は「言霊を超えて、リスクを正しく認識しその対処のための議論を大いに行い、あるべき対処を実施する」べきだろう。
世代の近い(2歳上)筆者ですから、そのくらいのことは言って欲しかったですね。