21世紀は「Data Driven Economy」の時代だが、データの活用は産業界だけのテーマではない。むしろ各国政府にとって、より大きな意味を持つ。いい意味では「Evidence Based Policy Making」のような、確とした統計データに基づく政策決定のようなこともあるだろう。しかし一般に、政府のデータ活用は国民を管理するために行われる危惧の方が大きい。
本書は昨年末出版されたばかりの、データの政府による活用(いわゆるガバメントアクセス:GA)に関する提言書。まとめたのは、以前「デジタル地政学」などを紹介した国際経済連携推進センター(CFIEC)。GAの不適切な事例が8つ紹介されている。
1)行政承認と引き換えの技術情報強制開示(中国)
2)自動車情報の国外持ち出し禁止(同)
3)安全保障目的の音声データ収集(同)
4)国家情報法による無制限のデータ収集(同)
5)非個人データ共有の義務化(インド)
6)欧州からの移転データに対する監視(米国)
7)犯罪捜査に関するデータの開示請求(同)
データの流通を阻害したり、自国のみに都合のいいようにこれを利用することは、経済発展に寄与しないばかりか、政府への信頼を貶める。そこで本書は、GAのための14の制約を各国政府に要求している。
・法的根拠を持つ
・目的の正当性と手段の必要性
・プロセスの透明性
・手続き要件の確立と承認、制約課程の順守
・目的内利用の制約
・独立した監督機関の存在
・実効的な救済策の整備
・収集にあたっての公平性と無差別性
・運用の一律性
・利用に関する公正性
・データ提出課程での経済合理性
・データ提出に関する補償の明示
・提出者に対する責任制限
・各国間の法制度相違に対する調停
本書をまとめたのは、20年来デジタル政策分野で共闘してきた友人です。なかなかいい仕事をしてもらえました。