先月まで松村劭元陸将補の「戦争学シリーズ」を月末に紹介してきたが、本書(2021年発表)は、その後継のような書。著者の木元寛明氏も元陸将補で、軍事史の研究家である。米陸軍兵站管理大学(ALMC)への留学経験があり、米軍の思想を深く学んだ。本書の事例にも、ナポレオンやフラー将軍、ロンメル元帥などと並んで、湾岸戦争を戦ったシュワルツコフ司令官やパウエル国務長官の名前が出てくる。
指揮官の仕事は基本的にC2(Command & Control)だとあり、意思決定のプログラム化は以下の7段階になるという。
1)任務の受領、目標達成のための時間を図る
2)任務分析、5W(誰が、何時等)を確定させる
3)行動方針の案出、1H(どうやって)の選択肢を並べる
4)ウォーゲームの実施、机上シミュレーションをする
5)行動方針の比較、方針案の優劣を評価する
6)行動方針の承認、1Hを確定させる
7)計画・命令の作成、具体的な計画を固め命令の形で伝える
目標達成のため障害となる彼と我の戦力を比較して、どのような戦術を採用するかを考える。一般に「攻撃側3倍」と言われるが、もう少し詳しく書いてある。攻撃/防御の比率で、
・遅滞戦術なら、6対1
・周到に準備された防御をするなら、3対1
・急造の防御ならば、2.5対1
・敵の側面に対して逆襲するなら、1対1
の戦力が必要という。補足的に政府の危機管理として、
・村山政権は憲法に拘り、阪神大震災で自衛隊の投入を躊躇した。
・安倍政権は順調時の管理しか知らない。「COVID-19」禍対応は入国管理を誤った。
という失敗例を示している。究極の状況でのリーダー論とあったので読んでみました。「最悪の事態を想定する」のは、やはり難しかったということですね。でも、ずっとそれでは日本は持ちませんよね。