新城彰の本棚

ミステリー好きの自分勝手なコメント

日本が抱える「内憂外患」

 2021年発表の本書は、内閣官房参与で外交評論家の宮家邦彦氏が<Voice誌>の巻頭言を2018~2020年にかけて執筆した内容をまとめたもの。先日筆者が<朝までナマTV>で「国会で秘密会をやってくれ」との発言に注目して、本書を読んでみた。

 

国会の秘密会と議員の守秘義務 - Cyber NINJA、只今参上 (hatenablog.com)

 

 世界的に「ダークサイド」が覚醒して、国際情勢は緊迫してきた。しかし国内、特に国会は無策で官界は劣化している。要するに「内憂外患」である。

 

◇内憂

 国会が立法をしていない。米国のように十分な政策スタッフを持たない議員では「法案を認めるかどうか」の実行力しかない。法案を作れる官僚機構も、硬直化して優秀人財も減っている。自衛隊は「闘わない軍隊」のまま、インテリジェンス機関もできていない。一部野党やメディアは「空理空論の安全保障論」を繰り返し、実質的な国防論ができない。そう、メディア全体の劣化も著しい。人口減少の弊害をカバーするには移民を受け入れるしかないが、皆が目を背け議論しようともしない。

 

        

 

■外患

 トランプ現象は「ダークサイド覚醒」の結果であって、原因ではない。急激な「Global&Digital」の流れで先進各国で格差が広がり、大衆の不満が噴出した。物質的にはグローバル化できても、心はそうはいかない。AIを初めとする先端技術(データ活用のことらしい)は、人権に配慮しない中国のような専制国家でより効果を発揮する。今は米中間には国力格差があるが、急激に縮まる可能性はある。日本を守ってきた地政学的優位(海に囲まれている等)は失われつつあり、その代替手段が見えてこない。

 

 旧社会党の「非武装中立」など空論といい、したたかな国際外交をするための提案を一杯しながら無策な国会に阻まれたという悔しさに溢れた書でした。ただ岸田政権は少しだけ、変わり始めていますがね。