新城彰の本棚

ミステリー好きの自分勝手なコメント

狂乱経済・社会の是正はなるか

 今日3/8は「国際女性デイ」、中国の通販サイト等では11/11(独身の日)と並ぶ「女王節」の書き入れ時である。2022年発表の本書は、中国通のジャーナリスト青樹明子氏の現代中国経済レポート。習大人が、巨大ITを叩き、教育改革と称して塾などを潰し、有名俳優を脱税等で告発する一方、問題を多く抱える「恒大集団」などは生き延びさせる(僕から見れば)おかしな政策を続けている理由は、本書を読むと理解できる。

 

 確かに中国経済は大きくなった。この30年間に日本のGDPは1.5倍にしかなっていないのに、中国のそれは37倍である。しかしそれは途方もない歪みを抱えた成長で、事実上狂乱経済・社会と言っても過言ではない。

 

        

 

 格差が著しく、一部富裕層の生活は半端ではない。広大な屋敷に住み、ランチでも数万円、1晩の会食で700万円も使うという。都市の中産階級でも120㎡のマンションに住むのは当たり前、子供一人を育てるのにかかる費用は4,000万円。ほぼ月収の全てを住宅ローン返済に充てなくてはいけないが、車と家がないと結婚できないので男は平均27歳で持ち家する。

 

 比較的高給取りでも月収は20万円ほどだが、それより少なくても高価なスマホやPC、衣料品等は欠かせない。安いスマホなど使っていたら「面子」が立たず、仲間外れにされてしまうとある。

 

 少しでも有利な職場、住宅、配偶者を求めてあがく一方、収支を考えず刹那的な消費を繰り返す人が多い。貯金しないのは、収入が不足しているケースもあるが、ファイナンスの感覚が希薄だかららしい。

 

 結婚適齢期の人の男女比が崩れていて、ある農村では女性1人に男性30人になっている。これに子育て費用の高騰が加わっているから、少子化のレベルは日本などの比ではない。正確な統計値はないが、韓国よりひどいだろう。

 

 中国の危機をとりあげたレポートは多いのですが、本書は外交や軍事ではなく社会の本質を暴いたもの。とても説得力がありましたが、習大人はこれからどうされるのですかね。