2021年発表の本書は、菅政権末期の同年8月前後に「自民党」を長く見てきた8名の関係者・有識者に宝島社がインタビューした結果をまとめたもの。安倍・菅政権の9年間に批判的な人ばかりで、政権の功罪というよりは「罪」ばかりを取り上げた内容となっている。本来題名は「官邸一強政治、失敗の本質」とすべきかもしれない。
ポイントとしては、
・国民への説明をしないまま、疑惑があっても選挙で勝つことで禊を済ませる
・官邸支配のため、抵抗する官僚を即時更迭して見せ官僚を非機能状態にした
・政治野望の強い官僚を官邸に長くとどめて置き、その力で強権政治を行った
・本来多様な意見のある自民党議員を、党の支配で縛り付け一強体制を構築した
・党公認や大臣ポストなどを道具に使い、政治家の言論を封殺した
・政治家も官僚も、縁故主義や好き嫌いで選別し「あるべき議論」をさせなかった
・政治家は、お友達、右派、総理一族、イエスマンを重用し、他は冷遇した
・国民には「自助」を求め、なるべく「公助」に頼らないよう意識づけた
・メディアに対してはおもねる者だけを重用し、そうでない者はバッシングした
・政治的公平性を盾に、これに抵触する場合は電波停止するなどと脅した
最後のものは先日起きた「総務省の放送法4条解釈論」にも繋がるかもしれない。
安倍元総理の野望は「米国の認める範囲での、大日本帝国の復活」(思想家内田氏)だったとある。自民党の右派である<清和会>のTOPが長く総理を続けたことで、戦争の出来る国への道を歩んだともいう。闘いたくはなくとも闘えるようにしていることは重要で、それを目指した安倍政権については僕は評価する。しかし先日「正論」の授賞式会場で感じた「右寄りすぎる感」への危惧がないわけではない。
その危惧の部分を強調する「傍証」をまとめた書でした。参考にさせてもらいますが、全部を鵜呑みにはできませんね。