新城彰の本棚

ミステリー好きの自分勝手なコメント

警官の父親を殺した容疑者

 エド・マクベイン大河ドラマ「87分署シリーズ」は、1956年から約50年間書き継がれた。前回1990年発表の「晩課」を紹介したが、本書はその次の作品(1991年発表)。1990年代後半以降の作品は手に入っておらず、本棚の残りも少なくなった。本書では、9作目「死が二人を」に登場したキャレラ刑事の父親トニイが、強盗に殺されてしまう。

 

 このシリーズは、実際の刑事部屋同様に複数の事件が並行して描かれる。本書でメインとなったのは、22歳の金髪娘がめった刺しされて殺された事件。確かに美女なのだが若さに似合わぬ立派なアパートに住んでいて、部屋からは高価な衣料や装飾品のほか1万ドル以上の現金が出てきた。さらに、男と交換したらしいエロチックな手紙も見つかった。

 

 キャレラたちはその「男」を探すのだが、見つける前に自宅で射殺体となって発見された。70歳に近い富裕な弁護士で、30歳代の娘2人、離婚した60歳代の妻、2年前に結婚したばかりの娘と同じ歳の妻がいる。随分な艶福家だが、さらに孫のような娘と愛人関係にあったらしい。遺産を受け取るのは現在の妻と2人の娘、加えて1万ドルづつ付き合いのある骨董屋とペットショップの経営者に贈られることになっていた。

 

        

 

 パーカー刑事は、町を離れていたという一人の娘が犯人だという。現在の妻は、22歳の愛人と交換したエロチックな手紙を見て激怒した。事件を追うキャレラに緊急の連絡が入った。パン屋を営んでいた父親の店に、2人組の強盗が入り、父親トニイが撃たれたという。病院に駆け付けた彼と妻のテディ、妹のアンジェラは、結局トニイを言葉を交わすことは出来なかった。

 

 黒人街の多い45分署管内での事件で、目撃された容疑者も担当する刑事たちも黒人だ。物語は艶福家の弁護士たちの連続殺人と、トニイが殺された強盗事件、さらに囮捜査で深く傷ついたクリング刑事の元恋人アイリーンことなどがからみあって進んでいく。

 

 7月のアイソラは「もやと熱波と湿気の3騎士が襲ってくる」暑苦しさ。その中で、警官の父親を殺した容疑者を追う、45分署の黒人刑事たちの執念が目を引く。アイソラ中の警官がなんとしても捉まえると意気込み、最後に容疑者たちを追い詰めたシーンには迫力が満ちていた。

 

 イタリア移民の家族は、とても温かいといいます。キャレラ家の家族の話は、もっと書いてくれてもいいかなと思いましたね。