新城彰の本棚

ミステリー好きの自分勝手なコメント

限りなく真実を求めて

 2012年発表の本書は、当代最大の(理系)知性を持った巨人6人へのインタビューをまとめたもの。インタビュアーはサイエンスライター吉成真由美氏である。その巨人たちとは、

 

ジャレド・ダイアモンドUCLA教授)

生物学者でピューリッツア賞受賞者「文明はわずかな誤りで崩壊する」

ノーム・チョムスキー(MIT名誉教授)

言語学者「エリートは必ず体制の提灯持ちに堕する」

オリバー・サックス(コロンビア大教授)

神経学・精神医学者「音楽は言語より先に脳に入り、ずっと長く残る」

マービン・ミンスキー(MIT教授)

コンピュータ科学・認知科学者「サッカーロボットより原発作業ロボットが重要」

◇トム・レイトン(MIT教授)

数学者でアカマイ創業者「無法地帯である情報産業に数学という武器で立ち向かう」

◇ジェームズ・ワトソン(DNA二重らせんでノーベル生理学・医学賞を受賞)

分子生物学者「個人が大切にされない組織、社会は発展しない」

 

        

 

 彼らに共通して問われたことの一つが、インターネットの未来。AI研究者であるミンスキー教授が、一番辛口な予想をしている。どれだけデータを詰め込めても、ドアひとつ開けられないではないかと。10年余り経って、ミンスキー教授のあるべき姿に、デジタル社会はなりつつあると思う。ただレイトン教授が指摘していたように、悪者も自由にインターネットを利用するのでサイバー空間は無法地帯となってしまう。そのひどさは、レイトン教授の予想を大幅に超えているだろう。

 

 脳科学者サックス教授が、障碍者でも脳力を発揮する例を示し、15歳ではまだ能力の方向性は見えないという。一方ワトソン博士は、16歳ほどでその人の能力の方向性は見いだせるという。6人に共通するのは、自らの専門領域で「限りなく真実を求める」姿勢だとある。敵は100万ありとても、決して妥協しないのが知の巨人のゆえんだそうです。